第2回【コラム1】都市気候より~ヒートアイランド現象で都市が暑くなっている~
「日本の気候変動2020」を読み解く:地球の温暖化現象について気象庁は最新の科学的知見をまとめ、気候変動に関する影響評価情報の基盤情報(エビデンス)として使えるよう、『日本の気候変動』を発行しています。最新の知見が盛り込まれた本書の内容を紹介します。
本書10Pの【コラム1】都市気候は、まさにその疑問に答える章です。
本書の内容を検証する前に、まずはヒートアイランド現象について確認しておきましょう。
ヒートアイランド現象とは、気温の分布を描くと等温線が都市を囲むようになり、それが島(アイランド)の等高線と似ていることからこの名前が付きました。
ヒートアイランド現象は主に以下の3つが原因で起きています。
①土地利用の変化(緑地や水面の減少)
②建築物とその高層化の影響
③人間活動で生じる熱の影響
さて、本コラムには前述の都市化の影響が比較的少ない15箇所の気温と東京の年平均気温偏差グラフが載っています。これによれば15箇所の気温は100年当たり1.24℃の上昇がみられました。対して東京の気温は100年当たり3.2℃の上昇がみられました。実に2倍以上の差です。
例えば、東京の年平均気温と、都市化等による環境の変化が比較的小さい15の観測地点で平均した年平均気温を比較すると、1950年代後半から1970年ごろにかけて、その差が急速に広がったことが分かる。この期間に東京の気温が大きく上昇した一因として、高度経済成長に伴う都市化の進展が寄与した可能性が推察される。
本書10P
調べたところ、同じく気象庁のデータに、「気候変動監視レポート2019」がありました。こちらの33Pの「2.1.1 日本の大都市のヒートアイランド現象」に各都市の温度データが載っています。
長期間にわたって均質なデータを確保できる日本の大都市(札幌、仙台、新潟、東京、横浜、名古屋、京都、大阪、広島、福岡、鹿児島)の観測地点と都市化の影響が比較的小さいとみられる 15観測地点(編注:網走、根室、寿都、山形、石巻、伏木、飯田、銚子、境、浜田、彦根、多度津、宮崎、名瀬、石垣島)を対象に、1927~2019 年における気温の変化率を比較すると、大都市の上昇量の方が大きく、地点によって差があるものの、例えば年平均気温では 15 地点平均の値を 0.5~1.8℃程度上回っている。
気候変動レポート2019 30P
こちらも東京ほどではないにせよ、やはり大都市の気温の方がより上昇していました。具体的な気温変化は以下の通りです。
都市名 | 100年当たりの年平均気温変化 |
札幌 | +2.6℃ |
仙台 | +2.4℃ |
新潟 | +2.0℃ |
東京 | +3.2℃ |
横浜 | +2.8℃ |
名古屋 | +2.9℃ |
京都 | +2.7℃ |
大阪 | +2.6℃ |
広島 | +2.0℃ |
福岡 | +3.0℃ |
鹿児島 | +2.5℃ |
※地点によっては観測地点が途中で変更されているため、データを調整している都市がある。
上記データを見れば、都市化と気温の上昇が有意に関係していることがわかります。ただし、細かく見ていくと地域ごとに違いがあります。たとえば札幌、仙台、新潟、東京、横浜、名古屋といった北日本や東日本の都市では冬や春の平均気温の上昇率が最大になっています。一方、京都、大阪、広島、福岡、鹿児島といった西日本の都市では春や秋の平均気温の上昇率が最大になっているとのことです。
地球全体の温暖化とは異なるものの、生活空間の気温が高まるという意味では、これも温暖化の1事象と言えるでしょう。日本の都市部は毎年確実に暑くなっていることがデータから読み取れます。
第3回は大雨および短時間強雨の発生頻度を見ていきます。
関連リンク:
気象庁『日本の気候変動2020』https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ccj/
気象庁『気候変動監視レポート』https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/monitor/
電気に関する総合サービスを提供する日本テクノの広報室です。エコな情報発信中。