• 「日本の気候変動2020」を読み解く
  • 気象庁では『日本の気候変動』を毎年発行しています。地球の温暖化について最新の知見が盛り込まれた本書について解説していきます。

第4回 日本国内の積雪、大雪は減少傾向にある|「日本の気候変動2020」を読み解く

「日本の気候変動2020」を読み解く:地球の温暖化現象について気象庁は最新の科学的知見をまとめ、気候変動に関する影響評価情報の基盤情報(エビデンス)として使えるよう、『日本の気候変動』を毎年発行しています。最新の知見が盛り込まれた本書の内容を紹介します。

これまで日本列島で進む温暖化の傾向および温暖化が降水量にもたらす変化などを見てきました。今回は温暖化と降雪量の関係を見ていきます。

1962年以降、日本海側の各地域では年最深積雪に有意な減少傾向が見られ、1日に20cm以上の降雪が観測されるような大雪の日数も減少している。
本書17P

私たちも「雪が少なくてスキー場開きができない」といったニュースに接する機会が増えており、この結果は温暖化が進んでいる以上、予測できたことといえるかもしれません。ただし、ことはそれほど単純ではないようです。詳しく見ていきましょう。

● 気象庁の日本海側の観測地点(表6.1 参照)で観測された1962 年以降の積雪のデータによると、地域ごとに平均した年最深積雪(一冬で最も多く雪が積もった量)には減少傾向がある(信頼水準90%以上で統計的に有意)。
● ただし、年最深積雪は年ごとの変動が大きく、それに対して統計期間は比較的短いことから、長期変化傾向を確実に捉えるためには今後のデータの蓄積が必要である。
● なお、降雪量、積雪量は観測地点ごとに差が大きいため、1981 年から2010 年の平均値を基準値とし、それに対する差ではなく比を、それぞれの地域について平均している。

上記にもあるように、年最深積雪とは「一冬で最も多く雪が積もったときの量」です。その量は年々減っており、さらに1日に20cm以上雪が降る日も減っているとのことです。
しかし次の段落では、年最深積雪は年ごとの変動が大きいのに対し、統計期間が比較的短いため、より確実に長期傾向をとらえるには今後のデータ蓄積が必要との解説があります。つまり、有意な変化は確かに見られるが、状況を正確に把握するにはデータ量が十分でない、ということです。

そもそも積雪量はその時々の気圧配置や海水面の状況、偏西風などの気象状況に大きく影響を受けます。たとえば、2020年12月~2021年2月は東日本・西日本がおおむね暖冬だったのに対し、北日本の日本海側では記録的な大雪になった場所が数多くありました。一方、日本海側の広範囲で記録的な大雪に見舞われた2018年1月は関東でも大量の雪が降り、交通機関がマヒするなど非常に大きな影響がありました。各地の降雪量は気象条件によって大きく変化するため、長期予測は難しいのが現状のようです。

また、温暖化に伴い降雪量が減ってきているのは事実ですが、一方で降雪量が増えると予想される地域もあります。

たとえば北海道。本書には次のような記述があります。

北海道の一部地域を除き、地球温暖化に伴い降雪・積雪は減少すると予測される(確信度が高い)。

● より狭い地域に着目すると、北海道内陸部や2℃上昇シナリオ(RCP2.6)での東日本の日本海側山間部など、厳冬期の降雪量及び最深積雪が増加すると予測される地域もあるが、狭い範囲での降水量の予測は不確実性が高いことから、この予測の確信度は低い。
本書18P

こちらについてはより詳しい考察が載っている日本の気候変動2020(詳細版)の説明を参照しましょう。

6.3  背景要員
 まず、気温が上昇しても0℃以下であれば積雪は融解せず、降水は降雪のままである。そして、気温の上昇に伴って大気中の水蒸気が増加し、湿潤地域の更なる湿潤化や極端な降水の頻度・強度の増大が生じる(第5章参照)。これらのことから、地球温暖化が進行しても気温が0℃以下となる地域や季節においては、降水量の増加が降積雪の増加として現れる場合もあると考えられる。
日本の気候変動2020(詳細版) 99P

つまり、気温が2℃上昇しても雪が融けないくらい寒冷な地域であれば、降雪量と積雪量はむしろ増加すると考えられるのです。この場合、気象庁は北海道の大雪山山頂や、本州の北アルプスの山頂などを想定しているようです。ごく僅かとはいえ、温暖化が進んでも降雪量が増える場所があるのですね。ただし、降水量の予測の不確実性を考慮すると、確信度は低くなります。

冒頭で「ことはそれほど単純ではない」と書きましたが、このように、「温暖化が進むと雪が減る」とも言い切れない理由がここにあります。

そして本書には「降雪・積雪は減少するが、大雪のリスクは残りうると予測される」と書かれています。気象庁が行った研究によれば、10年に1度といったごくまれにしか発生しない大雪は、本州の山岳部や北海道の内陸部でむしろ増加すると予測されたそうです。本書はその内容を以下のように説明します。

【参考】なぜ大雪のリスクは残るのか
 地球温暖化と降雪の関係を考える時には、次の3点を考慮する必要がある。それは、①気温が上昇しても0℃以下であれば雨ではなく雪として降ること、②気温が上がるほど空気中に含まれうる水蒸気の量は増えること、③地球温暖化が進行すると日本海の海面水温も上がるため、寒気の吹き出しの際によりたくさんの水蒸気が大気に供給されること、である。本州の日本海側で大雪が降るのは、強い寒気の吹き出しがあった時や、冬の季節風が大陸側で白頭山などの山を迂回したのち日本海で合流する、「日本海寒気団収束帯」が発生した時である。この時、地球温暖化が進行した状況では、よりたくさんの水蒸気が日本海から大気に供給されるとともに(③)、大気もより多くの水蒸気を蓄えることができる(②)。従って、沿岸域など気温が0℃を超えている地域では大雨が降るが、気温が低い内陸部や山地では大雪として降ることになるのである。
本書19P

一言でいえば、温暖化は空気中の水蒸気含有量を増やす効果があるため、気温が0℃を下回った際には、一度に雪がドカッと降る「ドカ雪」の可能性がある、ということです。そのため、普段の雪が減って油断しているところに大雪が降り、日常生活が大きく混乱することも予想されます。

気温が0℃以上だった場合は、雪ではなく雨が降ります。冬の雨が増えた場合、雪解け水が少なくなるため稲作などの農業に大きな影響が予想されます。また、ドカ雪は降っても普段は雪が少ないといったケースが増えた場合、雪国の除雪装置の維持コストなども問題となりそうです。

このように、温暖化は私たちの日常生活へさまざまな影響を与えることがわかります。

次回は温暖化と台風の関係について見ていきます。

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