第5回 台風の強さ・上陸数などに変化傾向はみられない

「日本の気候変動2020」を読み解く:地球の温暖化現象について気象庁は最新の科学的知見をまとめ、気候変動に関する影響評価情報の基盤情報(エビデンス)として使えるよう、『日本の気候変動』を発行しています。最新の知見が盛り込まれた本書の内容を紹介します。

前回までは日本列島の温暖化が降水量や雪の降り方にもたらした変化を見てきました。
今回は温暖化と台風の関係です。
近年では2019年に発生した台風15号(令和元年房総半島台風)・台風19号(令和元年東日本台風)が関東や東北に大きな被害をもたらしました。また、2018年の台風21号は関西地方を中心に大きな被害をもたらしています。
しかし、気象庁によれば温暖化はさほど台風に影響を与えていないようです。どういうことなのか、詳しく見ていきましょう。

台風の発生数、日本への接近数・上陸数に長期的な変化傾向は見られない
●台風の発生数は、1951年から2019年の統計期間を通して見ると、1年から数十年規模の変動が卓越し、長期的に増えている又は減っているという変化傾向は見られない。1960年代中頃、1990年代初め、2010年代中頃は平年よりも多く、1990年代後半から2010年代初めにかけては少ない年が多かった。
●日本への接近数は、発生数に似た傾向の変動を示し、長期化傾向は見られない。日本への上陸数においても、長期的な変化傾向は見られない。
本書20P

台風が多い年を俗に「当たり年」などといいますが、文字通り年によって当たり外れが大きく、温暖化との関係性は見出しにくいようです。“1年から数十年規模の変動が卓越し、”とはそうした状況を指しています。接近数についてもたくさん発生した年であれば、接近数も若干増えはするものの、長期スパンで見れば、温暖化したからといって特にたくさんの台風が日本に来ているわけではない、ということです。
少々意外かもしれませんが、実際2020年は2019年とは打って変わって台風の日本本土への上陸がなかったこと(上陸はありませんでしたが豪雨をもたらした台風10号などの存在はありました)、2021年も日本に上陸した台風は3つだけだったことなどを考えると、年によって差があることはご理解いただけるかもしれません。

台風の強度に長期的変化傾向は見られない
●台風の発生から消滅までの間で「強い」以上の勢力(10分間平均風速の最大値が33m/s以上)に分類される台風は、年間10個から20個程度発生し、1980年代後半から1990年代初めや、2000年代中頃はやや多く、1990年代後半や2010年代初めにはやや少ない。しかしながら、その発生数や台風の発生数全体に対する割合に長期的な変化傾向はみられない。
本書20P

台風の強度についても長期的変化傾向は特に見られないとのことです。日本の台風で観測史上死者・行方不明者が最も多かったのは1959年9月に上陸した伊勢湾台風(両者計5,098名)で、上陸時の中心気圧は929hPaでした。通常の大気の状態を表す「1気圧」は約1,013hPaで、それより低いと低気圧、高いと高気圧になります。伊勢湾台風の929hPaは歴代2位の低さです。ちなみに1位は1934年9月に上陸した室戸台風で、上陸時の中心気圧は925hPaでした。一方でたとえば2019年の台風19号は、関東各地で軒並み観測史上1位の降水量を記録しましたが、気象庁によると上陸前の中心気圧は955hPaでした。被害の大きさや範囲の広さなどからつい「最近の台風は強度が高い」と考えがちです。しかしデータを読み解くことで、温暖化が問題になる前から日本列島には大型で強い台風が上陸しており、各地に被害をもたらしてきたことがわかります。

今回は、地球温暖化は台風の強度にあまり関係していないことを確認しました。ただ、将来についてはどうでしょうか。次回は温暖化が今後の台風に与える影響について見ていきます。

台風豆知識

台風の「強さ」と「大きさ」
気象庁は台風のおおよその規模を伝えるために、風速(10分間の平均)を基にその台風の強さと大きさを表現しています。大きさは強風域(風速15m/s=平均して毎秒15m以上の風が吹いているか、吹く可能性がある範囲)の半径の大きさで決まります。また、「強さ」は最大風速で区分します。なお、風速25m/s以上の風が吹いているか、吹く可能性がある範囲は暴風域と呼んでいます。

【強風域の大きさの階級分け】
大型(大きい)=半径500Km以上~半径800Km未満、超大型(非常に大きい)=半径800Km以上。

【最大風速の階級分け】
強い=風速15m/s以上、非常に強い=風速44m/s以上、猛烈な=風速54m/s以上。

ちなみに超大型の台風(半径800Km)は、円の中心が東京にあった場合、強風域が北海道から九州までおよぶくらいの範囲です。近年では2017年10月に日本列島に上陸した台風21号が、確実な観測記録の残る1991年以降では初めて超大型の台風として上陸し、各地に大きな被害をもたらしています。
なお、気象庁では台風の中心が国内のいずれかの気象官署などから300 km 以内に入った場合を「接近」、北海道、本州、四国、九州の海岸線に達した場合を「上陸」と判定しています。

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