【概観・電気事業法】第1回/沿革

 新連載「概観・電気事業法」。ここでは日本の電気事業を運営していくための根幹的な法律について解説していく。初回はその導入として、 戦前の旧法成立から、戦後に制定された現在の電気事業法、その後の大きな改正といった歴史をたどり、法の「沿革」を見ていく。続く第2回は、附則を除く全9章からなる条文の構成を俯瞰的に紹介。各論となる章ごとの内容は、第3回から掲載していく予定だ。
※本記事は環境市場新聞第71号(2023年1月発刊)に掲載されたものです。


電気事業を統括する根幹の法律

 日本で最初の電気事業法(旧法)が成立したのは明治時代。現東京電力の前身である東京電燈会社の開業(1886年)を皮切りに電気事業の発展に伴って電気事業者数が増加、法規制が必要になった。電気料金の届出制や自家用設備の主任技術者制度なども含まれていた旧法は1911年に成立した。


 やがて事業者間の競争が激化していき、送配電設備の重複も散見されるようになる。公益事業としての統制を図るべく1931年、設備の統合、料金の認可制、会計処理規則などを盛り込んで旧法は改正される。
 1930年代後半になると戦時体制が強化されていき、電力管理法や国家総動員法によって電気事業は国家管理の体制に移行する。このとき民間の電気事業者が9つの配電会社に統合され、現在の大手電力のもとになった。
 終戦後、戦時体制はポツダム政令により解体される。新たに9電力会社が事業を担うようになり、1964年に現行の電気事業法が成立して翌1965年に施行される。
 この法律は、これまでの変遷を踏まえ、利用者保護や事業の発展、安全性の確保など明確な目的を掲げ、広域運営、サービス向上、保安行政の合理化といった側面から規制を定めた。公害問題への対応で1970年に「環境の保全」を法の目的に加えるなど小規模な改正はいくつかあったが当初からの内容は大筋引き継がれたまま30年にわたり電気事業の根幹に据えられた。
 最初の抜本的な改正は1995年。世界的な規制緩和の流れを受け、発電部門の新規参入拡大、特定地点での電力小売り解禁などの見直しがなされた。いわゆる第1次電力構造改革で、その後、法以外の制度整備を含め2008年の第4次まで改革は進められる。その中には、電力小売りの部分自由化、卸電力取引所の創設などがあった。
 2011年の東日本大震災の発生で露見した電力供給体制の脆弱性を改善するなどの目的で、2013〜2015年には電力システム改革として3段階の改正を行った。ここでは、電力広域的運営推進機関の創設、電力小売りの全面自由化、大手電力会社の送配電部門の分社化などが定められ、それに伴って電気事業の定義も見直されている。
 その後も競争環境の整備、エネルギー政策との整合性の確保、安定供給、環境保全といった課題に対応するため適宜改正がなされている。最近では大型蓄電池からの放電を発電事業に位置づける改正が2022年5月に実施された。


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