【概観・電気事業法】第3回/第1章総則

 電気事業法(電事法)の内容を紹介していく連載の第3回。初回は旧法が成立した明治時代から今日に至るまでの法の変遷、第2回は全9章(「2章の2」は独立した章なので正確には全10章)からなる本則の全体構成を見てきた。今回からは条文の並びに沿って1章から順に解説を進めていく。
 前回同様、記事作成において参照したのは、政府のサイト「e-Gov法令検索」で施行日を2023年4月1日に設定した電気事業法の条文。
※本記事は環境市場新聞第73号(2023年7月発刊)に掲載されたものです。


第1条で目的 第2条で用語の定義

 1章「総則」は、1条「目的」と2条「定義」の2つの条文からなる。
 法の目的を示す1条は全文を略さずそのまま引用しよう。「この法律は、電気事業の運営を適正かつ合理的ならしめることによって、電気の使用者の利益を保護し、及び電気事業の健全な発達を図るとともに、電気工作物の工事、維持及び運用を規制することによって、公共の安全を確保し、及び環境の保全を図ることを目的とする。」である。
 ここでは大きく2つの内容を述べていて、1つは「使用者の利益保護と電気事業の発展のために、その事業を適正で合理的に運営すること」、もう1つは「公共安全と環境保全のために、電気設備の運用を規制する」と概略できる。




 続く2条は4つの項からなる。最初の項で意義を定めるのは23の用語(小売供給、小売電気事業、小売電気事業者、振替供給、接続供給、託送供給、電力量調整供給、一般送配電事業、一般送配電事業者、送電事業、送電事業者、配電事業、配電事業者、特定送配電事業、特定送配電事業者、発電事業、発電事業者、特定卸供給、特定卸供給事業、特定卸供給事業者、電気事業、電気事業者、電気工作物)。残る3項は補足的規定で「一般送配電事業」に加える「みなし一般送配電事業」などを定めている。
 この中で「電気事業」は、小売電気、一般送配電、送電、配電、特定送配電、発電、特定卸供給の7つの事業を総称するものとして定義される。この分類は、電気に関わる事業を「つくる(発電)」「運ぶ(送配電)」「売る(需要に応じて供給する)」の3つに大別し、それを細分化したものといえる。事業類型を分けそれぞれを規制することで、電力小売りの全面自由化が進められてきた経緯がある。条文では各事業を定義したうえで、その事業を営む登録や許可などを受けた者について、該当する「事業者」と規定している。
 電気の「供給」についても、小売、振替、接続、託送、電力量調整、特定卸の6つに分ける。このうち家庭や企業など一般の需要に応じての供給は「小売供給」になり、送配電網を管理して発電所からの電気を需要地に届ける一般送配電事業などは「託送供給」に分類される。
 2条1項の最後で規定するのは「電気工作物」。発電、蓄電、変電、送配電、電気使用のための機器といった電気設備の総称であることを示す。なお、「一般用」「事業用」「自家用」といった区分けは3章で定義されている。



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