【環境関連の組織・機関】第2回/国連環境計画(UNEP)

 国連人間環境会議がスウェーデンのストックホルムで開催されたのは、1972 年6 月。環境問題についての初の本格的な国際会議だった。113 ヵ国から1,200 人以上の代表が集まり「人間環境宣言」と「環境国際行動計画」を採択した。その決議を実行に移すために設立されたのが、今回取り上げる国連の専門機関である。
※本記事は環境市場新聞第62号(2020年10月発刊)に掲載されたものです。


国連の環境政策を立案し、国際協力を推進。
多数の環境条約を主導、事務局の任もこなす

 ストックホルム会議とも呼ばれる1972年の国連人間環境会議の採択を受け、同年の国連総会で設立を決定したのが「国連環境計画」である。「United Nations Environment Programme」の頭文字からUNEP(ユネップ)と略称される。本部はケニアのナイロビ。本部を開発途上国に置いた最初の国際機関としても知られる。ほかに、アジア太平洋(バンコク)、西アジア(マナマ)など6ヵ所に地域事務所がある。2012年に、これまで58ヵ国で構成されていた管理理事国会合に代わり、すべての国が参加する国連環境総会(UNEA、通常会合を原則2年ごとに開催)を最高意思決定機関とした。
 設立の立脚点となる人間環境宣言は、自然環境だけでなく社会経済などの諸問題も含んだ総合的な人間環境を保護し改善する必要性を訴えている。その実施機関であるUNEPは、国連の環境政策の立案と実施、関連機関による活動の調整や管理、国際協力の推進といった任務に携わる。活動は「気候変動」「災害と紛争」「生態系管理」「環境ガバナンス」「化学物質と廃棄物」「資源効率性」「環境レビュー」の7つの分野を中心に実施されている。


 設立以来、国際環境条約の策定や締結のための交渉を数多く主導しているのもUNEPの特徴。そのうち複数の条約や多国間協定で事務局に指定されている。主だったものには生物多様性条約、化学物質・廃棄物関連3条約(バーゼル、ロッテルダム、ストックホルム)、ワシントン条約、オゾン層保護に関するウィーン条約、水銀に関する水俣条約などがある。多国間協定で事務局を担っている気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、1988年に世界気象機関(WMO)と共同で設立したもの。このIPCCは、2007年にノーベル平和賞を受賞している。
 UNEPの国際職員は70人。そのうち3.1%に当たる22人が邦人職員である(2017年12月時点)。なお1992年にはUNEPの機関である「国際環境技術センター」が日本の大阪に設置された。同センターでは途上国へ適正な環境技術を移転していく活動を実施している。


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