• Eco Story
  • 時代の流れとともに変化してきた環境問題に対する企業の取り組みを紹介します。

環境問題への全社対応で持続的発展#38/紀文グループ


 1938年創業で、水産練り製品を中心に国内外で製造・販売を行う紀文グループ。グループには創業当初からのものづくりの理念「疑わしきは仕入れせず、製造せず、出荷せず、販売せず」がある。「食の安全」という言葉が一般的になる前から、紀文の社員一人ひとりに貫かれている哲学だ。

「当グループは自然から素材をいただき“豊かな食”を創造する企業として、事業をグローバルに展開しています。私たちはこれまでも部門ごとに環境問題の解決などに取り組んできました。紀文食品本体が2021年に上場する際、事業の継続的発展のためには全社的に環境問題などに対応する必要があると考え、社長をリーダーにサステナビリティ委員会を設置しました。現在はSDGsの達成を柱として、ESGに配慮した経営を推進しています」(グループ統括室 経営戦略部部長 丸山 晶久さん)。

 委員会では構成メンバーである各部門の責任者が、テーマに応じて「検討チーム」を設け、横断的に議論し、その内容を取締役会に報告する。同社は主な現材料である水産資源に影響を与える要素として、気候変動を大きなリスクの1つとして捉えている。そのため、第三者機関が示す気候変動シナリオをもとに2030年および2050年の気温変化が2℃未満だったケースと約4℃上昇したケースを想定。それぞれで国内事業の運営上予見できるリスクをピックアップしている。

 例えば気温が今後約4℃上昇した場合、気象災害が激甚化し、サプライチェーン寸断化といったリスクが大きくなると分析。秋冬期の温暖化により主力商品であるおでん・鍋物商材の売上が減少するおそれがあると見る。その対策として調達先の多様化や代替品の開発、新たな商品カテゴリーの開発などを進めている。こうした一連の取り組みは気候変動関連情報タスクフォース(TCFD)の提言に基づき公開している。

トレーのラップ包装をトップシール形式に変えるなどで資材の削減や賞味期限の延長を可能にし、パッケージには環境配慮の証として紀文オリジナル「eco マーク」を記載。

   

 サステナビリティに関連して掲げる2030年までの目標には「2013年度比二酸化炭素総排出量の30%削減」「2019年度比フードロス(食品廃棄物量)20%削減」「食品廃棄物の再利用率99%を達成」「MSC漁業認証等を受けた持続可能な漁業によるすり身の使用率75%以上とIUU漁業からの調達ゼロ」「2018年度比プラスチック使用量を30%削減」などがある。ここにあるMSC漁業認証とは適切な管理のもと持続可能な手法で行われた漁業に対し与えられる認証のこと。IUU漁業は逆に「違法・無報告・無規制」で行われた漁業を指す。持続可能な漁業を通した水産資源管理を、メーカーとしてサポートしていく考えが反映されている。

 今後の課題は事業の発展と環境負荷低減の両立だ。グループは順次海外市場での展開を加速させていく予定で、生産量が増えればその分エネルギーの使用やロスなども増える。それらを相殺できる新たな仕組みや技術開発などをさらに進め、経済的成長と環境との調和の両立を目指しながら、グループ一体となってサステナビリティを追求する。


こぼれ話

「今後、気温が4度上昇した場合、秋冬期の温暖化により主力商品であるおでん・鍋物商材の売上が減少する可能性が高い」という同社の予測はショッキングでした。紀文さんも今後の温暖化の進行次第では代替商品の開発に取り組むことになるかもしれませんが、そうならないよう、CO2削減やごみの減量、プラスチックの使用量削減などに取り組まれています。こうした取り組みを継続することが重要だと改めて感じました。
冬に熱々のおでんをほおばる楽しさが後世まで続くよう、身近なところから行動していきましょう! 

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