【環境関連の組織・機関】第5回/世界気象機関(WMO)

 テレビなどで見かける天気図の雲の動きからもわかるように気象現象に国境はない。今や生活に欠かせない天気予報や、注意喚起の情報などを発するには、1つの国の観測だけではままならないのだ。そこで必要になるのが世界的な観測網や国際協力で、その中心となるのが、今回取り上げる国連の専門機関である。
※本記事は環境市場新聞第65号(2021年7月発刊)に掲載されたものです。


気象分野の世界協力を進める
国連の専門機関

 1950年3月に発効した世界気象機関条約により設立され翌年12月に国連の専門機関になったのが「世界気象機関」である。英語表記は「World Meteorological Organization」。略称は「WMO」。前身は1873年に創設された「国際気象機関(IMO)」で、この組織が発展的に解消され、WMOに引き継がれた。2021年3月時点で187の国と6つの地域が加盟。承認があれば国連に参加していない国や地域も一員になれる。日本の加盟は1953年9月だ。主な目的は、世界の気象業務の推進を通じて人類の活動に貢献すること。条約には、国際的協力による観測網の確立、効率的な情報交換の促進、観測の標準化、気象学の応用、研究や教育の奨励などが目的として規定されている。


 最高議決機関は世界気象会議(WMO総会)。4年に1度、すべての加盟国が参加し基本方針や予算などを決定する。この総会のアドバイザー機関となるのが15人の科学者から構成される科学諮問パネルで、専門性の高い客観的見地から助言を行っている。
 総会の決定に従い活動を管理するのは執行理事会。総裁1人、副総裁3人、地区協会長6人、総会の選挙で選ばれた各国気象機関の長27人の合計37人で構成され、理事会が毎年開催される。日本の歴代気象庁長官もこの執行理事に選出されている。地域特性に応じた気象業務の推進も必要で、そのために設けられているのが、世界を第Ⅰから第Ⅵまでの6つの地域に分けたそれぞれの地区協会だ。4年に1度、協会ごとに総会が開催される。日本の所属は第Ⅱ地区(アジア)である。そのほか、技術的課題などを検討する専門委員会や、研究活動の企画・調整を行う研究評議会といった組織も設けられている。そうした各組織の活動をまとめるのがスイスのジュネーブに本部がある事務局で、ここには約300人の職員がいる。
 国際的な環境問題にも科学的側面から重要な役割を担っており、前回掲載した地球温暖化の影響を評価し緩和策などを示す「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、このWMOと国連環境計画(UNEP)が1988年に共同で設立した組織である。


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