• Eco Story
  • 時代の流れとともに変化してきた環境問題に対する企業の取り組みを紹介します。

経営の軸に据えた環境対策#36/コクヨ株式会社

 コクヨ株式会社(本社:大阪府大阪市)は和式帳簿の表紙を製造していた「黒田表紙店」がその起源。創業は1905年だ。現在では事業領域を拡大し、文房具やオフィス家具などを製造・仕入れ・販売する業界トップクラスの企業である。
 環境対策を本格化させたのは1991年。当時はごみの最終処分場問題が深刻化しており、その解決に貢献していくため廃棄物の徹底管理を行った。その後1998年に専門部署である環境マネジメント部を設置し、ISO14001を取得した。
 「大きな転機になったのは2001年のいわゆるグリーン購入法の施行です」と語るのは、CSV本部サステナビリティ推進室環境ユニットのユニット長 齊藤申一さん。グリーン購入の対象には主要商品であるコピー用紙や文房具類などが該当していた。そこで法に適合する環境対策商品の開発を進めたところ、原価がアップし販売価格が上がってしまった。当時はそれが受け入れられず販売数は伸び悩んだが、環境に配慮した技術開発を先行して進めたことが現在の事業展開に大きく生かされている。
 2006年には「環境と経済の好循環」を実現すべく、高知県四万十町で「結の森プロジェクト」を開始した。地元の森林組合や高校生、行政そしてコクヨが協力し合い、森林を育てながら地域の活性化を目指すとともに、間伐材に新たな価値を付加することを目的とする。2021年7月現在、5425ヘクタールの森を管理し累計間伐面積は1900ヘクタールまで拡大している。2007年より高知県から「CO2吸収証書」が交付され二酸化炭素(CO2)吸収量は2020年度までに累計で6万7390トン― CO2になった。林野庁の「森林×脱炭素チャレンジ2022」優秀賞(林野庁長官賞)など数多くの賞も授かった。ここで発生する間伐材は集成材として加工し机やカウンターなどの商品として販売されている。

高知県四万十町での「結の森プロジェクト」。地元の森林組合や高校生らも参加する。

 そして2022年5月、取り組みをさらに進めるため、環境対策を経営の軸とする方針転換を行った。それまではSDGsの実現を目的としてCSV本部を中心に活動していたが、今後は重要な経営課題の1つに位置づけ、経営陣が主体となって取り組むべき課題と再定義した。目標もそれまでの2030年 CO2排出量26%減(2013年比、国内連結)から、2024年の同50%減などに引き上げた。国内主要8拠点の電力を再生可能エネルギーに切り替え、目標達成を図る予定だ。今回の目標について齊藤さんは「かなりチャレンジングな目標です。しかし環境問題は待ったなしというのが我々の認識であり、その解決に向け経営と一体となって対応します」と話す。環境対策を軸に経営を進めていく同社の挑戦は、始まったばかりだ。


こぼれ話

2006年にコクヨ株式会社がスタートさせた高知県四万十町で行っている森林保全活動の「結の森プロジェクト」。「結(ゆい)」という言葉はどういう意味をもつのでしょう。かつて農山村での田植えなどで、人々が互いに助け合って共同作業を行う習慣がありました。この共同作業のことを「結」と呼んでいたそうです。 このプロジェクト名には地元の人々と同社が互いに助け合ってはじめて実現されるものという想いが込められています。実際に同社は、四万十町森林組合のほか、四万十高校、高知県・四万十町の職員の皆さんと共同で間伐の効果をモニタリング調査しています。

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