• Eco Story
  • 時代の流れとともに変化してきた環境問題に対する企業の取り組みを紹介します。

顧客価値の創造を環境保全へ#15/株式会社ブリヂストン

 世界最大のタイヤ会社・ゴム会社であるブリヂストングループは26カ国に生産・開発拠点を持ち、150を超える国々で事業を展開している。
 従業員数は14万4000人超。2002年、多様な状況下で働く全従業員が軸のぶれない環境活動を実践するための拠り所としてグループ共通の「環境理念」を掲げた。2011年に時代の変化に対応し、「環境宣言」として内容を改訂したが、『未来のすべての子どもたちが「安心」して暮らしていくために…』という同社の思いを示すフレーズは変えなかった。
 その思いを強く表した活動が2003年から毎年実施している「ブリヂストンこどもエコ絵画コンクール」だ。子どもたちから環境をテーマにした作品を募集し、自然の大切さを再認識してもらう。大人が思いもよらない純粋な視点と鮮やかな色彩感覚で描かれた絵画が多数集まる。絵を見た人が「かけがえのない地球環境」を未来に残したいという気持ちになっていく。そんな催しだ。第13回となった2015年度は全国から5万6128件の応募があった。

第13回ブリヂストン大賞受賞作品

ソリューションで共通価値を創造

 事業が世界に与える影響の大きさを認識し、2050年を見据えた環境長期目標も策定している。
 だが環境活動ばかりに偏重するわけではない。同社の技術をベースに顧客そして社会の多様な課題に解決策を提供することで、環境保全にもつなげられると考えている。その代表例が、商品単体ではなく複数の商品あるいはサービスを組み合わせ、顧客が抱える課題を解決するソリューションビジネスの展開だ。
運送ソリューションもその一つ。核になるのは、国内で他社に先駆け本格的に事業化したリトレッド技術。使用済みタイヤのトレッド(接地部分)を取り除き、新たにゴムを加硫・圧着して使用するものだ。新品タイヤ、リトレッドタイヤとメンテナンスを組み合わせてパッケージで提供する。顧客の経済性を向上させると同時に省資源やCO2削減などの社会ニーズにも応える。また空気圧がゼロになっても所定のスピードで一定距離を走行できる「ランフラットテクノロジー採用タイヤ」の開発も志は同じだ。これにより未使用のまま廃棄されることの多いスペアタイヤが不要になる。コスト削減、省資源化、さらに燃費向上によるCO2排出量削減にもつながる。

 昨年のCOP21では地球温暖化対策についての「パリ協定」が採択され、企業にはより長期的な視野に立つ環境活動が求められた。持続可能な社会の実現を目指し、ステークホルダーとの共通価値を創造していくブリヂストングループの姿勢は、その国際的要請に応えているようだ。
 「顧客価値の創造」の信条と、未来の子どもたちが安心できるようにと願う「環境宣言」の両輪は、活動の足回りを強固に支えていくだろう。

こぼれ話

 トップである津谷正明氏が、環境に対し誰よりも真摯に考えていること、それが同社の原動力であり、強みだと感じました。「従業員全員が環境に対して同じ思いを持つことが大切」という言葉が印象的で、さまざまなアプローチがありました。ステークホルダーと多くの接点をもつことが自らが考える機会になり、そこで行う社会貢献を通じて、環境への思いをさらに強くしているというお話もいただきました。

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