• Eco Story
  • 時代の流れとともに変化してきた環境問題に対する企業の取り組みを紹介します。

逆境を好機に「低燃費八潮」#13/レンゴー 株式会社

 機能性とリサイクル性をあわせ持った包装材として、日常生活になくてはならない段ボール。日本における段ボール産業の歴史をつくってきたレンゴー株式会社は、企業として最優先で取り組むべき経営課題の一つに「環境負荷の低減」を挙げる。創業100周年を迎えた2009年には、新たな100年に向けた長期経営方針「レンゴーグループ環境憲章」を制定し活動を推進している。

 「環境憲章」という全社的な方針はあるが全国35の直営工場はそれぞれ組織体系や生産品目が異なるため横並びの活動に加え、自発的な活動も重視する。主体的な取り組みなら継続性も成果もより高まるからだ。
 そんな中、ユニークな活動で大きな成果をあげたのが八潮工場(埼玉県八潮市)だ。全社の二酸化炭素(CO2)総排出量の約4分の1を排出する中核的な生産拠点であり、地球環境問題が注目される前から積極的に設備的な対策を行っていた。

「打つ手はない」の声も…

 八潮工場では知恵を絞り工夫を凝らしながら設備的な対策を大方やり終えた矢先のことだった。県の条例が新たに制定され、基準年度比マイナス6%という厳しいCO2削減目標が課せられた。最悪のタイミングだ。社内からは「もう打つ手はないのではないか」との声も上がった。
 それでも、工場長を筆頭に、この課題に立ち向かおうと決断する。着目したのは、改善の余地が残されている運用面での取り組みだ。若手中心のメンバーによる活動チーム「低燃費八潮」を結成。従業員からアイデアを募り、改善につながる取り組みは、可能な限り試行した。意見は133案も出され「低燃費八潮」での検討を経て、これまで66件が実施された。それぞれでPDCAサイクルをしっかり構築したことで、全従業員の省エネへの意識が大きく変わった。

CO2削減活動チーム「低燃費八潮」による設備チェックの様子

 特にこだわったのはエネルギー消費の削減。製紙で大量のエネルギーが必要なのは乾燥工程だ。省エネにはその前工程で、抄いた原料から水分をきつく絞り上げればいい。だが絞りすぎると品質の低下が懸念される。検証の結果、省エネと品質が両立する水分率は46%と突き止めた。
 とはいえ、その数値を導くには、国内には例のない強力なプレス装置が必要になる。であれば最初に導入しよう。付帯設備を含めて試行錯誤し、苦心の末、一般的なプレス装置の約1.5倍強力な装置が稼働した。これにより乾燥時のエネルギー消費は15.7%も削減できた。一連の活動により、埼玉県が求める削減数値目標は達成。「低燃費八潮」は、2014年度の省エネ大賞・経済産業大臣賞を受賞した。
 これはまさに逆境を好機に変える逆転劇だった。従業員の方向性が一つになり、コスト削減や競争力強化という付加価値ももたらされた。
 現在、八潮工場はバイオマス自家発電設備の導入も進めている。手を緩めることなく、環境負荷の低減に力を注ぎ続ける。

こぼれ話

 八潮工場は、埼玉県地球温暖化対策推進条例に基づく目標設定型排出量取引制度において、「優良大規模事業所」の「準トップレベル事業所」に認定されています(対象となる県内561事業所の中で八潮工場を含め2事業所のみが認定)。「低燃費八潮」をはじめ、同社の環境への取り組みである「軽薄炭少」(より薄く、より軽く、CO2排出の少ないパッケージづくり)を見据えた改善を長年積み重ねてきたことが評価されました。また、次の目標となる「トップレベル事業所」の認定も視野に捉えており、今後も事業活動全般において環境への取り組みをますます強化していくそうです。

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