• Eco Story
  • 時代の流れとともに変化してきた環境問題に対する企業の取り組みを紹介します。

創業から続く環境配慮のモノづくり#35/サラヤ株式会社

 サラヤ株式会社(本社:大阪府大阪市)の創業は1952年。主に洗浄剤・消毒剤などの衛生用品と薬液供給機器を開発・製造・販売している。「衛生」「環境」「健康」の3つのキーワードを事業の柱に据え、より豊かで実りある地球社会の実現を目指している。
 1971年、ヤシ油を原料に用いた「ヤシノミ洗剤」を発売した。高度経済成長期に石油系洗剤による水質汚染が社会問題となる中、植物系洗剤の先駆けとして誕生した主力ブランドである。創業者の更家章太氏は三重県熊野市の出身。生家は林業を営み自然豊かな環境で子ども時代を過ごした。自身を育んだ熊野の自然への強い思いが原点となって創業時から環境配慮のモノづくりにこだわっている。
 「日本でもエコへの関心が高まっていた2004年に転機が訪れました」(広報宣伝統括部長の廣岡竜也さん)。テレビ番組で、パーム油の原料となるアブラヤシの主要原産地ボルネオ島では、熱帯雨林が伐採されてアブラヤシ農園に変わり、そこに暮らす動植物が絶滅の危機に瀕していると報道された。同社はヤシノミ洗剤の原料の1つとしてパーム油を商社経由で仕入れていたため、原産地の状況を把握しておらず、番組からの取材に対して「ボルネオ島で何が起こっているかは知らなかった。だが改善策を講じたい」と回答したが、番組では「知らない」を切り取られて報道されたため、誤解した消費者から電話やメールなどで抗議を受けることになった。
 同社は状況を正確に把握するため現地に調査員を派遣した。「わかったのは熱帯雨林の伐採と動植物の絶滅危機が現実に起こっているということでした」(廣岡さん)。しかしパーム油は世界全体で85%が食用で、残り15%が化粧品や洗剤、ペンキやプラスチック加工品などに使われている。同社の使用量は少量ではあったが使う以上は責任があるとして問題に正面から取り組む決意をした。
 現在ボルネオ島では、同社社長もメンバーのNPO法人ボルネオ保全トラスト(BCT)を通じて3つのプロジェクトが進められている。「緑の回廊プロジェクト」は、失われた熱帯雨林だった土地を買い戻し、分断された森をつなぐことで動物の生息域を回復させている。「命の吊り橋プロジェクト」は、川で分断された森に点在するオランウー
タンが生き残りを図れるよう吊り橋をつくり、森をつなぐ試みだ。そして「野生動物の救出プロジェクト」は、生息地を追われ、住民が仕掛けた罠にかかって傷ついたゾウや、森で孤立したオランウータンを、現地の野生生物局とともに救出・治療し、森へ戻している。活動資金には、パーム油関連ブランドである「ヤシノミ」シリーズや「ハッピーエレファント」シリーズなどの売上の1%をBCTを通じ現地に送っている。

森で孤立していたところから救出されたオランウータン。

 今後の事業活動について廣岡さんは「環境と人権に配慮して生産されたパーム油の普及を支援するほか、世界初の天然洗浄成分〝ソホロ〞の活用など、環境への影響を抑えることを第一に考えた商品開発を続けていきます。また、消費者とのコミュニケーションも積極的に取り、商品開発に生かしていきます」と話す。
 自然にやさしい商品開発という創業者の思いを受け継ぎながらも、時代とともに変化する消費者の声を大切にし、新たな市場を開拓していく。


こぼれ話

今回ご登場いただいたサラヤ株式会社がボルネオ保全トラストを通じて行っている「命のつり橋プロジェクト」では、水が嫌いなオランウータンのため、あるものを使って吊り橋をつくり、分断された森をつなぐことで命をつなげる試みを行っています。そのあるものとは、消防用のホースです。同社は大阪消防局の協力を得て廃棄する消防用ホースを入手し、つり橋の道具として再利用しています。このホースの特長は、なんといっても長くて丈夫なこと。こんなところでも同社の環境配慮を感じたのでした。

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