• Eco Story
  • 時代の流れとともに変化してきた環境問題に対する企業の取り組みを紹介します。

おいしさも環境保全も変わらず追求#09/株式会社 永谷園

 「お茶づけ海苔」や「松茸の味お吸いもの」でおなじみの株式会社 永谷園。同社の環境保全活動は、企業理念である「味ひとすじ」にならい、基本的なことから徹底して取り組むことで、一本芯の通った活動となっている。その本質は、「正しく、正直に、そしてまじめに」というCSR活動指針でも表現されている。

 地球温暖化という社会的背景をきっかけに、永谷園が環境問題に目を向け始めたのは1990年代後半。2001年に準備委員会を立ち上げ、基本計画となる「永谷園グループ環境マネジメントマニュアル」を策定。2003年に具体的な削減の枠組みを公表し、本格的な活動をスタートさせた。  特徴は基本計画をもとにした独自のシステムを採用している点。本業に則した活動を効率的に継続して行っていくため、国際規格のISO14001はあえて認証取得せず、各拠点でルールを作成し、PDCAを運用している。それにともない内部環境監査体制の強化はもちろん、新入社員研修時から環境教育を実施し、環境意識の向上とともに活動の下地づくりも行っている。

新入社員を対象とした環境教育の様子。
永谷園では定期的に従業員向けの環境教育(講習会)も行っている。

 環境にやさしい「商品」「事業所」「社員」の3つの創造を目指す永谷園。
 「事業所」と「社員」に関しては活動に対する投資を示す「環境会計」からみても、見合った成果をあげているという。
 しかし、「商品」は一筋縄ではいかず、品質の安全性を維持しながら包装の軽量化を進めるのは容易ではない。長年顧客に親しまれてきたパッケージデザインの変更がきっかけで、店頭での訴求力が弱まってしまったこともあった。同社は、お茶づけ海苔をはじめとするロングセラー商品を多く抱えているが、それらの経験を踏まえ、「包装のデザインが商品の魅力を伝える重要な役割を担うとあらためて痛感しました。それ以降、時代の変化や消費者のニーズを敏感に感じ取る意識が、以前より高くなった」(広報部 環境推進室 室長 斉藤公一さん)という。
 包装資材の軽量化は継続的な課題として取り組まれているが、本業に影響を及ぼすものはなくなった。目に見えない、触れてもわからないごく細部の改良が日々研究され、年間約27商品が見直されている。

 企業活動と環境保全活動の両立は、すべての企業にとって大きな課題だが、同社は本業と環境の双方に価値を見いだすことで、より自然で持続可能な活動につなげている。
 「当社が行う取り組みに目新しさはありません。身の丈に合わせ”やれることをやる”そして”やり続ける”。本業とのバランスをとりながら着実に積み重ねていくだけです」(斉藤さん)。変わらぬおいしさを追求してきた永谷園は、環境保全活動においても変わらぬ姿勢を貫いていく。

こぼれ話

取材時、印象に残った言葉が「特別なことは何もやっていません。できることからはじめて、それをやり続けるだけです」というもの。目に見えて結果の出やすい活動開始当初と比べ、その後は数値面で横ばいが続き、さらに目新しい活動は少なくなり、年を重ねるごとに毎年発行する「環境・社会報告書」の更新には苦慮されているようでした。しかし永谷園は、「基本から忠実に、自分たちにできることを、自然なかたちでやり続ける」という姿勢を崩さずに活動を続け、 ありのままに表現しています。消費者に対して、背伸びすることなく、ひたむきであるからこそ、長年親しまれる商品を数多く生み出せるのだと実感。そういった姿勢は、企業理念の「味ひとすじ」にも通じるものがあると感じました。

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