化石燃料からの「脱却を加速」

COP28 国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議

温室効果ガス削減などを議論する国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)が2023年11月から12月にかけて、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催された。パリ協定の進捗状況を評価するグローバル・ストックテイク(GST・ページ下部に用語解説) を初めて実施し、これまでCOPでは明文化されていなかった化石燃料からの脱却を決定文書に盛り込んだ。

GSTの実施プロセスにおいては、すでに進捗状況の情報収集や分析などが行われていた。COP28では、その結果を世界各国で検討し今後なすべき対策などを議論して合意した決定文書としてまとめている。
 強調されたのは、現在の状況はパリ協定目標に到達するための軌道に乗っていないこと、1.5℃目標に向けた行動と支援が必要であること。目標達成には、2025年までに温室効果ガスの排出をピークアウトさせ、2030年までに43%、2035年までに60%削減しなければならないとの認識を共有した。
 対策強化のための議論で難航していた化石燃料については、欧米の先進国や海面上昇で浸水被害を受ける島嶼国などが「段階的廃止」を求めたがサウジアラビアなどの産油国の反対で見送られた。会期を1日延長した協議のうえで採択した決定文書では「化石燃料からの脱却を進め、この重要な10年間で行動を加速させる」と表現は弱まった。とはいえ、これまでのCOPでは石炭火力発電の段階的廃止には合意していたが、石油や天然ガスなどすべての化石燃料の扱いに言及したのは今回が初めてになる。
 そのほか、2030年までに、再生可能エネルギーの発電容量を世界全体で3倍にし、省エネの改善率を世界平均で2倍にすることや、排出削減対策がとられていない石炭火力の削減を加速させること、ゼロエミッション車や低排出車の導入などで道路交通分野の排出削減を進めることなどがうたわれた。
 パリ協定ではすべての締約国が、それぞれの温室効果ガス排出削減目標(NDC)を国連に提出する決まり。その各国の取り組み状況を世界全体としてまとめた検証結果が今回のGSTの決定文書だ。このままではパリ協定の目標には届かないと認めた合意内容に整合する次期NDCの策定が各国に求められる。
 次回のCOP29はアゼルバイジャン、次々回のCOP30はブラジルで開くことも決められた。


グローバル・ストックテイク(GST)
2015年に採択されたパリ協定では、世界の平均気温の上昇を産業革命前から2℃、できる限り1.5℃に抑えるという目標が掲げられた。GSTは、その達成に向けた世界全体の進捗状況を評価し、今後必要になる対策を示す仕組み。5年ごとに行われる。
2023年9月には情報分析や技術的評価などの議論を経てまとめられた「統合報告書」が公表されている。

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