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【特集】2022 冬の節電要請期間スタート!ーー企業の冬の省エネ・節電事例を紹介

2022年12月1日より、政府の呼びかけによる冬の節電要請期間がスタートしました。今回は政府の進める電気利用効率化の対策「節電プログラム」の概要や、企業が実際に取り組む省エネ・節電の事例をご紹介します。


節電要請の背景

政府は、全国の企業や家庭に対して12月1日より2023年3月31日までの期間で、数値目標を定めない省エネ・節電の協力を呼び掛けています。冬の節電要請は2015年度以来、7年ぶりの実施です。
この冬の電力需給の状況を見てみましょう。最大需要に対する電力供給の余力を表す「予備率」は2023年1月・2月で全国的に3%の最低水準を確保しています。ただし、1月の東北・東京エリアは4.1%とぎりぎり。冬の電力需給は、想定外の気温低下による需要の急増や、降雪・曇天による太陽光発電量の低下など、複合的な要因が関わるためこの数字も安心とはいえません。また世界情勢などによる燃料調達への懸念も拭えない状況のなかで、対策は不可欠との見解です。

「節電プログラム」とは

政府では今冬の省エネ・節電に協力する企業や家庭への支援として「節電プログラム ディマンド・リスポンス」(国の節電プログラム促進事業)を展開しています。本事業は、省エネ・節電の促進が目的。事業に採択された小売電気事業者などが実施するDR(デマンドレスポンス)(※)を活用した節電プログラムへ参加表明した需要家は、参加特典・達成特典などを得ることができます。
なお、各小売電気事業者などが進めるプログラムへの申し込み期間は事業者によって異なります。
(※)日本テクノでは、政府の進める「ディマンド・リスポンス」をDR(デマンドレスポンス)と表記しています。


DR(デマンドレスポンス)とは
電力の需給状況に合わせて、市場価格が安い時間帯は電気を積極的に使用し、市場価格が高い時間帯(電力需給ひっ迫時)は使用をできる限り控えていただくことをDR(デマンドレスポンス)といいます。
DRにより、需給ひっ迫の解消に寄与するとともに、非効率な火力発電の焚き増しなどが不要となり、中長期的に効率的な電力システムの構築につながることが期待されています。
また効率的なピークカットとピークシフトを行なうことで、企業など高圧契約を結ぶ需要家は電力量料金の引き下げを図ることが可能となり、既存の再生可能エネルギーを効率よく活用することにもつながります。


業種別による電力消費の特徴は?

一言に企業といっても、製造業・卸/小売業・医療機関、宿泊業、オフィスビルなど電気の使い方はさまざまです。ここでは、経済産業省の公表する資料「冬季の省エネ・節電メニュー」をもとに、業種ごとの電力消費の特徴をまとめましたのでご覧ください。

 ■製造業

製造業では生産品目にもよりますが、一日の消費電力のなかで生産設備の占める割合が約80%です。このため生産工程での省エネ・節電対策が効果的です。
電力の需給状況とともに、納品予定や作業の流れを見直すことで、生産設備の使い方にもメリハリがつき省エネ・節電につながります。

 ■卸/小売業

「接客中は省エネ・節電のことまで頭が回らない」。卸/小売の現場では、こうした声が多く聞かれます。卸/小売業において、消費電力のうち照明が約24%、空調が約22%を占めます。
照明は、店舗のイメージを左右する大切な設備ですが、季節や時間帯によっては消灯も考えられます。お客さまの動き、開店前・閉店後の作業時間、また外光を上手に取り入れることで、時間帯に合わせた無駄のない使い方が可能です。

 ■医療機関

医療機関においても、消費電力の高い設備は空調の約35%、照明の約33%です。この2つを合わせただけで、全体の70%近くを占めています。
受付や診察室、リハビリ室など、行動や状況が異なる多くの部署をかかえる病院では、現場ごとに取り組みを考えることも効果的です。

 ■宿泊業

宿泊業においては、お客さまがチェックイン後の16時~23時頃に高い電力消費が続く傾向があります。
暖房などの空調機器は、電源を入れて使い始める時に多くの電力を使用します。お食事会場や入浴施設など、1カ所に多くの利用客が集中する時間帯は注意が必要。前倒しできる業務はないかなど、館内全体の使用状況を見直しましょう。

 ■オフィスビル

オフィスビルにおいては、空調・照明に続いてパソコンや複合機などのOA機器が電力を消費する設備です。
「オフィスでの省エネはできることが限られている」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、製造や販売・サービスの現場を統括する管理部門が率先して省エネ・節電に取り組むことが、全社への活動の浸透へとつながります。

企業(高圧受電)の冬の省エネ・節電どう進める?

最後に、実際に各企業ではどのような省エネ・節電に取り組んでいるのか、冬の取り組み事例を見ていきましょう。

◇ 製造業 ◇

冬の空調はタイマーを活用して冷えるエリアから

岩手県にある金属加工工場では、生産設備と空調の同時稼働が電力ピークの原因となっていました。そこで空調は業務開始前の6:30から30分おきに1台ずつ稼働するようタイマーを設定。工場内で陽が当たらない場所、排熱のない生産設備が置かれているエリアから順次暖めるようルールを決めました。
また、生産設備も同じラインのなかで作業に優先順位をつけ、従業員同士が声をかけ合いながら数分間隔で立ち上げるなど、デマンド管理を徹底。契約電力23.2%、使用電力量6%の低減効果が出ています。

◇ 卸/小売業 ◇

お客さまに支障のない照明の使い方で省エネ!

三重県にある書店は、吹き抜けの開放感あるつくりが特長でした。しかし、これが使用電力量を押し上げる結果に。そこでこれまで開店30分前からフル稼働させていた店内27台の空調を、まずは入口部分のみ、ほかは開店してから稼働するよう運用方法を変更しました。
あわせて照明も1機あたり2灯ついているところを1灯に間引き。外灯も看板照明を除き、ネオンや間接照明などをオフに。ネオンはメイン通り沿いにあるため、来客数が減るのではないかという不安もありましたが、加減しながら行うことで、来客数に支障をきたすことはありませんでした。

◇ 保育施設 ◇

床暖房の使用方法を見直して、契約電力36.2%低減

滋賀県にある保育園では、玄関前にある広々としたホールの床暖房に着目しました。冬場はイベント開催などホールを終日利用することが多いのですが、床暖房と空調、4台のシーリングファンを併用し、温かい空気を循環させていました。しかし、ここで使用している2面の床暖房が電力ピークの原因となっていました。
そこで、同時に稼働させていた床暖房を、1面ずつ交互に使用するようルール化。電源を切った後も、しばらくは保温効果が持続するため、極端な冷えを感じることなく省エネ・節電につなげています。

冬の省エネ・節電は、業種に関係なく、そこで働く従業員、また利用者などの健康管理にも配慮することが基本です。事業場の状況を見つめ直すことで、これまで当たり前に行っていたことにもムダが見つかります。無理のない省エネ・節電に取り組んでいきましょう。

【参考】
企業の省エネ成功事例(https://www.n-techno.org/
日本テクノのお客さまが取り組む省エネ活動を多数掲載しています。業種・エリア・事業規模で検索できるので、ご自身の事業場の状況にあった事例をご覧いただけます。

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