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地球温暖化がもたらす気候変動への影響について~気象庁・気候変動監視レポート2022より~

「気候変動監視レポート」は、日本を含めた世界各国の大気、海洋などの観測・監視結果に基づいた、気候変動に関する科学的な知見をとりまとめた報告書です。1996 年より気象庁から毎年刊行されており、2022年版のレポートは2023年3月に発表されました。報告書では「2022年6月~7月初めの記録的な高温」についてまとめられるなど、近年いよいよ激しくなっている温暖化現象について掲載されています。 今回は本レポートの内容を紹介するとともに、気候変動に対する適応策について考えます。

 

 

猛暑傾向は現在も継続中

○ 2022年夏は全国的に高温となり、特に6月下旬から7月初めにかけては東・西日本を中心に記録的な高温となった。平均気温偏差は、6月下旬には東日本で+4.0℃、西日本で+3.2℃、7月上旬には北日本で+3.2℃となり、1946年の統計開始以降1位の記録を更新した。
○ 日本付近で上層の亜熱帯ジェット気流が北に蛇行し、上層の高気圧と下層の太平洋高気圧がともにこの時期としては記録的に強まったことが主な要因で、これに持続的な温暖化傾向が加わったため、記録的な高温となった。

気候変動監視レポート2022

2022年の梅雨もまだ明けない6月下旬から7月上旬にかけ、日本列島は猛暑に襲われました。群馬県伊勢崎市は6月25日に最高気温40.2℃を観測。7月1日には過去最高となる全国6地点で最高気温が40度を超えました。東京都心でも6月25日から7月3日にかけ過去最長となる9日連続の猛暑日(平均気温35度以上)を記録しています。ちなみに2022年夏の平均気温は1991年~2020年の30年平均値と比べ0.91℃高く、1898年の統計開始以降、2番目に高い値となっています。

上記引用の通り、その原因は日本付近で上層の亜熱帯ジェット気流が北に蛇行し、上層の高気圧と下層の太平洋高気圧がともにこの時期としては記録的に強まったことにあります。このように高温を招いた原因について、気象庁などは地球温暖化の影響が仮になかった場合の気候モデルを用いたコンピュータプログラムで検証しました(この研究手法をイベント・アトリビューションと呼びます)その結果、地球温暖化の影響がなかったとすればこうした高温はおよそ1200年に1度という極めて稀な頻度でしか起こらないことが判明しました。よって地球温暖化の結果生じた高温であろうと推測されています。

猛暑傾向は2023年においても顕著です。8月の東京地方は全日で真夏日(最高気温30度以上)を記録しました。詳細な原因については今後の分析結果を検証する必要がありますが、温暖化傾向は年々その勢いを増しているといえそうです。

 

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北海道南東方などで記録的な高海面水温、サンマの価格などに影響

また、2022年は海水温が過去最高を記録しました。近年のサンマの不漁やブリなど南方の魚が北海道沖で漁獲されるようになったのはこの高海水温が影響していると考えられています。

北海道南東方、本州東方の海面水温は、2022年7月以降平年より高く経過し、北海道南東方では7、10、11月、本州東方では10、11月に各月の海面水温として1982年以降で過去最高となった。

気候変動監視レポート2022

これらの水温上昇の背景には暖水渦や黒潮系暖水の影響があると考えられています。2023年8月には今年初となるサンマの水揚げがありましたが、各地で軒並み最高値を更新する事態となりました。地球温暖化が収束しない限り今後もこうした傾向は続く可能性が高いと思われます。

 

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世界各地で温暖化が進む

また、2022年は日本だけでなく世界各地で異常気象現象が発生しました。以下に主だったものを紹介します。

パキスタン及びその周辺では6~8月に異常低温、7~8月に異常多雨となった。ヨーロッパ中部から北アフリカ北西部では5~12 月に異常高温、1、5~8、10~12月に異常少雨となり、ヨーロッパ各国で月、季節、年の平均気温ならびに月降水量の記録更新が伝えられた(英国気象局、フランス気象局、ドイツ気象局、スペイン気象局、ポルトガル海洋大気研究所)。英国東部のコニングスビー(Coningsby)では7月19日に40.3℃の日最高気温を観測し、英国の国内最高記録を更新した(英国気象局)。オーストラリア北部からニュージーランド北部では3~11月に異常高温となり、ニュージーランドで月、季節、年の平均気温の記録更新が伝えられた(ニュージーランド気象局)。オーストラリア南東部では1、3~5、7~11月に異常多雨となった。

気候変動監視レポート2022

また、フィリピン、パキスタン、アメリカ、ブラジルといった各国で台風(ハリケーン)や大雨が発生し、多くの死者が出ています。これらについては2021年に発生し、2022年にも持続した ラニーニャ現象 の影響があると考えられています。ラニーニャ現象とは太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より低くなる現象のこと。太平洋上では東風が平常時よりも強くなり、西部に暖かい海水がより厚く蓄積する一方、東部では冷たい水の湧き上がりが平常時より強くなる傾向にあり、これらがフィリピンの台風形成などに影響を与えたと考えられます。また、大西洋でも海水温が上昇する傾向にあり、その結果、強いハリケーンを生みアメリカ、ブラジルに大きな影響を与えたと考えられます。

 

温暖化で生じる自然災害の被害を減らす「適応」について

今後、地球温暖化が進行すれば自然災害による被害が甚大化すると予測されています。気候変動問題については温室効果ガスの削減といった「緩和策」と並んで、被害の軽減・回避を図る「適応策」が重要です。

国内では2018年6月に気候変動適応法が成立しました。その結果、都道府県および市町村は地域気候変動適応計画の策定が義務付けられたほか、各地で地域の適応情報を提供する「地域気候変動適応センター」の設置が進められています。特に農林水産関係では温暖化による収量減少や品質劣化といった影響が著しいため代替作物への転換や品種改良などが進められています。

豪雨などの対応については地域の防災ハザードマップを参照することをおすすめします。ご自身の住んでいる場所ではどのような被害が生じる可能性があるのかをあらかじめ知り、非常時の計画を立てておくようにしましょう。

なお、気候変動適応法は2023年2月に改正され、新たに熱中症への対策がくわわりました。この背景には国内の熱中症死亡者数が年間千人を超えるようになり、自然災害による死亡者数をはるかに上回るようになったことがあります。環境省は熱中症予防サイトを開設しており、熱中症の危険度が高まった際は「熱中症警戒アラート」を発することで注意を呼び掛けています。熱中症対策に有効なのは身の回りの 暑さ指数 (WBGT)を知ることです。 暑さ指数を知り、必要に応じて水分補給と体温引き下げを図り、熱中症を未然に防ぐようにしましょう。


緩和策について個人でできることは限られますが、適応策はある程度まで個人での対策が可能です。災害発生時などに慌てずに済むよう、備えを万全にしておきましょう。

 

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