【環境関連の組織・機関】第3回/国際自然保護連合(IUCN)

 今回取り上げるのは、世界最大の自然保護ネットワークといわれる国際的な非政府機関(NGO)。スイス民法に基づいて設立された社団法人だ。「自然本来の姿と多様性を保護し、天然資源を公平で持続可能に利用していくため、社会に影響を与え、勇気づけ、支援すること」を使命に掲げている。
※本記事は環境市場新聞第63号(2021年1月発刊)に掲載されたものです。


国家、政府機関、非政府機関からなる連合体
国際条約の起草も担う世界的な自然保護機関

 1948年に設立された国際的な自然保護機関。正式名称は「International Union for Conservation of Nature and Natural Resources(自然および天然資源の保全に関する国際同盟)」で「IUCN」と略称される。一般的には「国際自然保護連合」の通称で呼ばれ、本部はスイスのグラン(ジュネーブ郊外)にある。生物多様性の保全などを目的に、調査研究、啓発活動、政策提言などを行う。国連総会のオブザーバーでもあり、国際的な環境条約において専門的知見の提供やその起草にも携わっている。


 中でも世界遺産条約、生物多様性条約、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)、特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約(ラムサール条約)については関係が深い。世界
遺産条約では候補地の審査、ラムサール条約では事務局業務を担っている。
 組織は大きく分けて会員、専門委員会、全体を統括するIUCN事務局の3つの柱で構成される。
 会員は、国家、政府機関、非政府機関などからなり、その数は2020年10月時点で1400を超える(うち国家・政府機関は209、非政府機関は1143)。専門委員会は、1万7000人以上の各分野の専門家が集まるボランティアネットワークで6つの専門委員会(種の保存、世界保護地域、生態系管理、教育コミュニケーション、環境経済社会政策、世界環境法)がある。このうち種の保存委員会では毎年、IUCNレッドリストを作成し、絶滅の恐れがある生物種の情報を世界に発信しており、国際的な生物多様性保全活動に欠かせない重要な情報源となっている。
 日本では環境省が政府機関、外務省が国家会員としてIUCNに加盟。その他複数の国内NGOも加盟しており、これらの連携を高める目的で、1980年にIUCN日本委員会が設立され、2001年にIUCN理事会から正式な国内委員会として承認された。2004年には知名度向上と活動支援強化を目的にシンガーソングライターのイルカさんがIUCN初の親善大使に任命されている。


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