【環境関連の組織・機関】第7回/国際エネルギー機関(IEA)

 設立当初は石油の安定確保のため国際協力体制の構築を目指すものだったが、現在は環境対策の推進など活動の範囲を大きく広げ、安定的な世界のエネルギー供給に貢献する取り組みに力を入れる。前回取り上げた「世界最大のシンクタンク」とされる経済協力開発機構(OECD)の下部機関を見ていく。
※本記事は環境市場新聞第67号(2022年1月発刊)に掲載されたものです。


エネルギー政策に幅広く関与
OECD 内の自律的政府間組織

 設立は19744年11月。略称のIEAは、「International Energy Agency(国際エネルギー機関)」の頭文字をとったもの。1973年の第1次オイルショック後、産油国がつくる石油輸出国機構(OPEC)に対抗するために、アメリカの提唱によりOECD内の自律的政府間組織として発足した。2021年9月現在の加盟国は日本、アメリカ、イギリス、韓国など30ヵ国。OECD加盟国(38ヵ国)のうち石油輸入量の90日分以上の備蓄があることを参加の要件としている。


 設立当初はいわば石油安全保障に主眼が置かれていたが石油需給の比較的緩和した今は「Energy Security(エネ
ルギー安全保障)」「Economic Development( 経済成長)」「Environmental Awareness( 環境保護)」「Engagement Worldwide(世界的協力)」の「4つのE」を目標に掲げエネルギー政策全般に幅広く関与する活動を行っている。
 事務局はパリのOECD事務局内。事務局長はトルコ出身のファティ・ビロル氏。同氏を含め歴代事務局長は7人で、うち5代目は在アメリカ日本大使館公使などを務めた日本人の田中伸男氏だった。
 最高意思決定機関は加盟国代表で構成される「理事会」。原則2年ごとに閣僚理事会を開く。そのもとに、緊急時の石油融通、石油市場、長期協力、協力国関係、エネルギー研究開発といった分野の常設作業部会などを置く。
 これらの組織を通して石油供給途絶時にはメンバー国が協調行動をとり国際的な安定供給を図る。設立時からの重要な目的であったエネルギー安全保障を踏まえながら、昨今の世界の情勢に対応するため、エネルギー全般の需給に関するデータ分析、省エネ政策、再生可能エネルギーの推進策などを行い、各国のエネルギー政策の立案や国際協調に貢献している。
 毎年刊行している「World Energy Outlook(世界エネルギー展望)」は国際的にも高い信頼が寄せられ、エネルギー政策を分析する国別審査レポートの公表も、各国に有益な情報を提供している。


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