【概観・電気事業法】第4回/小売電気事業の規制

 電気事業法(電事法)の内容を紹介していく連載の第4回。前回の1章「総則」に続き、2章「電気事業」を見ていく。10節に分けられた最も内容の多い章なので、電気を「売る」「運ぶ」「つくる(発電)」と大別し、関連する条文を順に解説する。今回は「売る」に当たる1節の「小売電気事業」。
 記事作成において参照したのは、政府のサイト「e-Gov法令検索」で施行日を2024年4月1日に設定した電気事業法の条文。
※本記事は環境市場新聞第74号(2023年10月発刊)に掲載されたものです。


電気を小売りする事業者への規制

 2章「電気事業」は1節の「小売電気事業」のほか各節(一般送配電事業、送電事業、配電事業、特定送配電事業、発電事業、特定卸供給事業、特定供給、広域的運営、あっせん及び仲裁)に分かれた条文で構成されている。


 前号で解説した1章では小売電気事業を「一般の需要に応じて電気を供給する事業」とし、登録を受けそれを営む者を小売電気事業者と定義していた。2章1節はその登録についての細かな取り決めと業務内容に関する規制などを2款かんに分けた条文で定める。なお、ほかの多くの法律と同様に電事法も、「章」「節」「款」「目もく」の階層に分け内容が整理されている。法文では「第一款」のように「第」に続け漢数字で表記しているが、この連載では冗漫を避け読みやすさを考えて原則「第」は省略し、算用数字で表す。
 1款「事業の登録」には「2条の2」から「2条の11」まで10の条文がある。冒頭で、事業を行うためには経済産業大臣の登録を受けなければならないと定め、その後の各条文で、登録に必要な申請、変更、取り消しなどに触れる。
 登録のための申請書は事業者の名称、住所、事業開始予定日などのほか電気の供給能力についての記載も求めている。条文では「小売供給の相手方の電気の需要に応ずるために必要と見込まれる供給能力の確保に関する事項」が必要とある。具体的には、顧客である需要家の最大需要電力想定量と算出根拠、想定に見合う供給量の調達計画、調達先などの情報である。
 申請を受けた経産相は登録簿に事業者を記載するが、供給能力確保が見込めなかったり、過去2年以内に電事法に関する一定の刑罰を受けているなどの場合は登録を拒否しなければならないと定める。
 そのほか、供給能力が変化したときに必要な変更登録、事業承継や休廃止など届出すべき事項、違反や不正による登録の取り消しなどを示す。
 2款「業務」は「2条の12」から「2条の17」まで6の条文。供給能力確保の必要性はここでも述べられ、不足により需要家に不利益をもたらす恐れがある場合は経産相が改善命令を出せるとする。
 営業活動でのルールも定める。需要家と契約を結ぶときには料金や供給条件についての説明を義務づけ、必要事項を記載した書面の交付も求めている。苦情や問い合わせに適切かつ迅速に対応することや、いわゆる名義貸しの禁止などもうたう。説明義務や苦情対応の不備には改善命令も出せると定めている。


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