【概観・電気事業法】第5回/送配電事業の規制

 電気事業法(電事法)の内容を紹介する連載の第5回。今回は2章「電気事業」の2節から4節まで。前回の1節「小売電気事業」では電気を「売る」分野の規定を見たが、それに続く「運ぶ」事業の条文を概観する。ここには枝番号のついた「3節の2」があり、合計4つの事業が含まれる。
 記事作成において参照したのは、政府のサイト「e-Gov法令検索」で施行日を2024年4月1日に設定した電気事業法の条文。
※本記事は環境市場新聞第75号(2024年1月発刊)に掲載されたものです。


電気を運ぶ事業者への規制

 送配電、いわゆる「電気を運ぶ」事業は2章の中で4つの事業類型に分け規定する。発電事業者から受けた電気を小売電気事業者などへ運ぶ2節の「一般送配電事業」、一般送配電事業者に電気を振替供給(送電を中継するような役割)する3節の「送電事業」、許可された供給区域で配電を行う3節の2の「配電事業」、特定の供給地点で小売電気事業者などへ電気を運ぶ4節の「特定送配電事業」だ。なお「送電」と「配電」は大まかに、前者が発電所から変電所まで、後者が変電所から各需要家までといった区分けで、「送配電」はその両方を示す。


 2節「一般送配電事業」は3条から27条の3まで38の条文(改正で削除した12条を含む)を「事業の許可」「業務」「会計及び財務」の3款に分けて記す。公益性の高い送配電網の運営を担う部門なので許可や制限、禁止事項などさまざまな規制が設けられている。
 現在、全国を10の供給区域に分け、区域ごと1事業者(いずれも以前は大手電力の送配電部門。特例の沖縄電力以外、該当の事業を分離)が経済産業大臣の許可を受け一般送配電事業を営む。許可申請には、事業計画、設備内容、収支見通しなど詳細な情報が必要で、経産相がその内容を不適切と判断した場合、事業は許可されないと定めている。
 そのほか、託送供給義務(原則電気を運んでほしいという要請を拒めない)、許可を要する料金設定、電圧と周波数の維持、小売りや発電など兼業の原則禁止、関連企業の優遇禁止といった規制がある。
 3節「送電事業」は27条の4から27条の12までの16の条文。この節と4節は大半が2014年の電力システム改革第2弾で追加された。中継的に電気を運ぶ送電事業も公益性は高く、一般送配電事業と同様の許可、制限、禁止などの規制がある。他の条文の内容を当てはめる27条の12(準用)で列記するのは、すべて2節から引かれたものだ。
 3節の2「配電事業」は27条の12の2から27条の12の13までの12の条文。地域の分散型電源活用や災害時対応などを目的に、特定の供給区域で配電事業が可能になるよう2020年の改正(エネルギー供給強靱化法)で追加された。借り受けた大手電力の設備などでも運営できるという規定がある一方、許可制や禁止事項など一般送配電事業と同等の制限も定めている。
 4節「特定送配電事業」は27条の13から27条の26までの14の条文。特定の供給地点(1つの建物や構内)での事業だ。許可でなく届出制で登録すれば小売供給の兼業も可能。電圧と周波数の維持、供給力確保などの義務も定めている。





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