• 環境政策最前線
  • 再生可能エネルギーの活用や供給システムなど、環境政策を早稲田大学の横山隆一名誉教授が解説します。

分散型エネルギーを活用したレジリエンス強化と地域循環共生圏の形成

 最近、自然災害時の防災拠点としてのマイクログリッドに注目が集まり、多くの実証事業が進められている。
 経済産業省と環境省は2019年4月、エネルギー基本計画や環境基本計画を踏まえた地域循環共生圏の形成と分散型エネルギーシステムの構築に向けた連携チームを発足した。分散型エネルギーシステムの構築に取り組めば、省エネの推進や再生可能エネルギー(再エネ)の普及拡大、エネルギーシステムの強靭化に貢献できる。それをコンパクトシティや交通システムなどのまちづくりと一体的に進めることで地域の活性化につながり地域循環共生圏の形成にも寄与できる。実際に地域の再エネを最大限活用し、レジリエンス強化と同時に、まちづくりや地域の活性化にも貢献するような分散型エネルギーの実証事業が各地で始まっている。
 実証事業では再エネの主力電源化に向け、主に太陽光と風力のコスト低減や固定価格買取制度によらない再エネ普及の課題検証、環境アセスメントの効率化などについて検討が行われている。
 また、自治体主導の取り組みとして、電気自動車(EV)などを活用しつつ地域の再エネ普及を最大化し、災害にも強い自立分散型の地域エネルギーシステムの構築を図る動きも出てきた。大幅な二酸化炭素(CO2)排出削減も同時に目指していくものだ。
 このような自立分散型のエネルギーシステムを切り口とした地域循環共生圏の社会実装の成功例に千葉県睦沢町が中心となって「道の駅むつざわつどいの郷」などを運営する「むつざわスマートウェルネスタウン拠点形成事業」が挙げられる。
 この拠点形成事業では、地元産の水溶性ガス採取後のかん水をガスエンジン廃熱で加熱し温浴施設で利用する電熱併給型マイクログリッドを構築している。系統連系困難な地域で太陽光などの分散型電源を最大限導入するために自営線を敷設し高額な電灯需要(住宅・街路灯)の託送料金負担も回避している。2019年9月の台風15号により千葉県全域に大規模停電が発生した際にも、ガス発電により各家庭への給電を継続し、温浴施設や携帯電話の無料充電設備を町内外へ開放した。これには地元や周辺住民から多大な感謝の声が寄せられた。地域循環共生圏の形成の良きモデルケースといえるだろう。

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