• 環境政策最前線
  • 再生可能エネルギーの活用や供給システムなど、環境政策を早稲田大学の横山隆一名誉教授が解説します。

省エネと脱炭素に貢献する
コジェネレーション(熱電併給)への期待


 ロシアによるウクライナ侵攻を受けエネルギー危機の懸念が高まっている。これを背景に欧州連合(EU)は2022年3月8日発表のリパワーEU政策において、天然ガス輸入多様化のほか、エネルギー効率の向上や自然エネルギーの導入拡大による2030年までの脱ロシア産化石燃料の加速を表明した。
 現在、最も求められているのは化石燃料の消費量をできる限り減らすことだ。それには供給面では自然エネルギーの活用、需要面ではエネルギーの効率化と省エネが、最有力の手段となる。その手段の1つにコジェネレーション(コジェネ:熱電併給)がある。天然ガス、石油、LPガスなどを燃料としてエンジン、タービン、燃料電池その他の方式で発電し、その際に生じる廃熱を回収するシステムである。
 回収した廃熱は、蒸気や温水として、工場の熱源、冷暖房、給湯などに回す。熱と電気の双方を使えるので燃料が本来持つエネルギーの約75〜80%を利用できる。50%に満たない一般的な火力発電に比べ、高いエネルギー効率が実現される。
 東京電力川崎火力発電所では2010年から、川崎スチームネット株式会社によるこのシステムを使い、発生する蒸気を近隣コンビナート内の10社の工場に供給している。これにより、ボイラーを活用して蒸気をつくり出す従来の工程に比べて年間約1.1万キロリットルの燃料(原油換算)が削減でき、二酸化炭素(CO2)排出量も年間約2.5万トン減らせる。省エネと脱炭素という2つの利点が同時に得られるものだ。
 また需要地に近接して設置すれば電気を送るとき生じる送電ロスをほぼなくせる。コジェネは電力系統から供給される電気とは別に発電できるため、万が一、系統側に事故が起きた場合でもエネルギー供給の継続が可能になり、非常時対応や事業継続にも役立つ。
 夏季や冬季の電力需給逼迫時に、コジェネを稼働させれば、電力のピークカットにもつなげられる。その際、廃熱を空調に使えば電力需要の低減にも貢献できる。
 現在、日本におけるコジェネは工場などの産業用、商業施設や病院などの業務用、家庭用などがある。経済産業省ではこれを拡大し、コジェネとエネルギー管理システムを組み合わせた運用で、都市の再開発などの際に地区やコミュニティ全体に電気と熱を供給する(面的利用)構築事業を各地で進めている。

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