再エネ大量導入のための
直流/交流ハイブリッド配電網の必要性
総合資源エネルギー調査会基本政策分科会(2020年12月21日)では、2050年の発電電力量と見込まれる約1.3兆〜1.5兆キロワット時のうち50〜60%を再生可能エネルギー(再エネ)で賄うよう議論を進めるべきと述べられ、カーボンニュートラルの実現に向け再エネの大量導入が不可欠となっている。
しかし、各地の電力系統では送電線空き容量がゼロであるとして新規接続が拒否されたり、接続のための送電線増強費用として多額の負担金が再エネ事業者に転嫁されたりするケースがあり、導入拡大の妨げになっている。
対策としては、配電網の容量増加があるが、その新設・増設は、用地の確保や建設に多大な費用を要することから、一般送配電事業者が再エネ導入拡大のためだけにこれを行うとは考えにくい。
送電量を増やすには配電電圧を上げるという方法もある。66キロの特別高圧送電線で送られてくる電力は需要近郊の変電所で6.6キロに降圧され、さらに配電柱の変圧器で200 や100に下げて需要家に供給される。この6.6キロの電圧を約3倍の22キロに昇圧すると、同じ電線を使って3倍の電力を送れることになる。だが、これも電圧が高くなるため絶縁の見直しが必要で、電力会社もなかなか踏み切れないでいる。
そこで注目を集めるのが直流配電である。再エネの主力電源化により、マイクログリッド、スマートグリッドが普及し、そこに設置される太陽光発電、燃料電池、蓄電池などは出力が直流だ。負荷機器でも、液晶テレビ、LED照明などのデジタル家電や冷蔵庫、空調機器などへのインバータ装置の導入、情報通信機器(ICT機器)の増加に伴い、直流技術の使用が増加している。
直流は、変換器段数が少なく変換損失が低いので交流回路よりも部品点数が少なくて済む。周波数の同期や無効電力がなく運用が容易なため故障頻度も低い。よって高い信頼性やシステム寿命が長くなるなどの利点がある。交流系統と併設する形で直流配電を設置すれば、交流系統に影響を及ぼすことなく送電容量の増大は可能だ。
実際の導入では既存の交流系統と融合・並存する形で直流/交流ハイブリッド配電網として建設が進められるだろう。すでに愛知工業大学がそのハイブリッド型マイクログリッドを構築しており、今後の再エネ拡大への貢献が期待されている。
早稲田大学 名誉教授。電力技術懇談会会長。環境・エネルギー・電力システムの市場分析に特化。再生可能エネルギーやスマートグリッドに代表される環境・エネルギーシステム研究の第一人者。