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エシカルフード|エコブックス

倫理に配慮した食品はおいしい

 環境問題や持続可能な社会などの話題で目にする機会が増えたのが「エシカル」という言葉だ。日本語で「倫理的な」を意味し、人や環境、動物愛護などに配慮した商品を積極的に購入する「エシカル消費」がよく使われる。
 この「消費」の部分を「フード」にした書名。タイトル通り食品を中心とした倫理的な消費活動について、注目される背景、海外の動向、欧米と比べ遅れている日本の現状、今後に寄せた期待などが記される。あとがきには「本書は食のエシカルのゴールを示すものではなく、入り口に立つために最低限必要な知識を提供する役割に過ぎないかもしれない」(250頁)とある。
 例えば日本ではなじみの薄いアニマルウェルフェア(AW)。欧米では食のエシカルに欠かせない要素だという。家畜などの動物も倫理に基づいて苦痛、恐怖、不快などを排除し自由な行動のもとで飼育していく考え方。これには広い用地も必要で国土の狭い日本で実践すればコストも上がり販売価格も高くなる。その事情を踏まえ出費が増えてもその食品を購入し応援していくのがエシカル消費だ。
 倫理的な正しさだけで支出増を受け入れるのは難しいかもしれないが、AWに配慮した畜産物には格別の特典がついてくる。おいしさだ。ストレスのない環境で育てられた家畜から得られる乳製品、肉、卵がどれほど美味か。その実例も多く紹介されている。

KADOKAWA/角川新書 990 円(税込)
山本謙治 著
農産物流通・ITコンサルタント、食生活ジャーナリスト。著書に『日本の「食」は安すぎる 「無添加」で「日持ちする弁当」はあり得ない』(講談社)など。



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