【環境関連の組織・機関】第9回/地球環境ファシリティ(GEF)

 気候変動対策や生物多様性保全など地球規模の環境問題に取り組むには、少なからぬ資金が必要になる。多くの環境関連条約には開発途上国にもかかるその大きな負担を国際社会で支援する仕組みが盛り込まれている。今回はそうした資金供給システムを担う組織について。
※本記事は環境市場新聞第69号(2022年7月発刊)に掲載されたものです。


地球環境保全の対策資金を
開発途上国の支援として供給

 地球環境問題に取り組む開発途上国を支援する目的で地球環境ファシリティ(Global Environment Facility:略称GEF)が試験的運用をスタートしたのは1991年7月。3年のパイロットフェーズ終了後、1994年に正式発足した。世界銀行に設置した信託基金により、原則無償で承認されたプロジェクトに資金提供する。気候変動枠組み条約生物多様性条約、砂漠化対処条約、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)、水銀に関する水俣条約の5条約で資金供給を担う機関として指定されている。


 2022年4月現在の加盟国は184ヵ国。全加盟国の代表で構成する総会が増資期間に合わせ4年に1回(原則は3年に1回)開催され、政策全般を議論する。実質的な意思決定機関は総会のもとに置かれる評議会。日本を含む32の代表国メンバー(先進国14、経済移行国2、途上国16)で構成され、年2回または必要に応じて開催する。そこでは資金提供するプロジェクトの承認や活動の評価などを行う。評議会議長は事務局長(CEO)が兼任。
 事務局はアメリカのワシントンにあり、活動全般の調整にあたる。現CEOはコスタリカ出身のカルロス・マニュエル・ロドリゲスさんで、前任は日本で財務省副財務官を務めた石井菜穂子さんだった。受託機関の世界銀行は、信託基金を管理する。
 そうした組織の中枢を、専門的アドバイスを提供する科学技術諮問委員会(STAP)と評議会に直接提言を与える独立評価局(GEF IEO)の2つの部署が支える。
 評議会が承認したプロジェクトを実際に進めるのは、GEFエージェンシーと呼ばれる18の実施機関。各機関が開発途上国政府と協力して事業の枠組みを設計し、評議会の審査を経て実施する。
 原則としてGEF資金はプロジェクトに対し全額は支給しない。環境保全を確かに進める足がかりとしての役割を果たす。これまで1991年から2021年の間に約217億ドルが投入されている。


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