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リンゲルマン効果(社会的手抜き)/チームの仕事を考える<3>

見える化、役割分担、声かけで防ぐ

 前回取り上げた「同調圧力」のように集団には普段の自分と違う行動を誘引する作用があります。フランスの農学者マクシミリアン・リンゲルマン博士は次のような実験をしました。
 綱引きをしたときの力の測定です。1人のときを100%とし参加人数の増加による個人の力量の変化を調べました。「人数が増えれば、相乗効果でより大きな力が発揮される」と考えて、それを実証しようとしたのです。しかし示されたのは仮説とはまったく逆の結果でした。
 個人の力量の変化は、参加者2人で93%、3人で85%と減少し8人では49%でした。人数が増えるたび1人の出す力は落ちていったのです。この現象は「リンゲルマン効果(社会的手抜き)」と呼ばれ、集団内で個人の責任や貢献度が不明瞭になって起こる現象とされています。
 この「社会的手抜き」を防ぐ方法はあるのでしょうか。まず考えておくべきは、意図的な「手抜き」ではなく本人は「全力を出しているつもり」であること。そのため「手を抜くな」と叱るのは逆効果です。モチベーションが下がり、かえってパフォーマンスが落ちてしまいます。
 それを踏まえたうえでこれを防ぐには①各人の作業量や進捗状況の「見える化」(無意識のパフォーマンス低下を気づかせる)②各人への役割分担(責任の範囲が明確になり、そこに力を注げる)③各人への声かけによるモチベーションの維持(応援する人がいれば集団でも1人のときと同じ力を発揮できるという実験結果がある)――といった方法が効果的です。
 また類似するものに「傍観者効果」といわれる作用もあります。「自分がやらなくても誰かがやるだろう」と思ってしまうこと。火事の現場にいる人が「ほかの人が通報しているはず」と考え、自分では通報しないケースなどがこれに当たります。
 このような集団におけるこころの働きを皆が知識として共有しておけば、アウトプットに優れたチームができたり、エラーを未然に防げるなど多くのメリットが得られるでしょう。

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