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IPCCが第6次統合報告書を公表 温暖化対策待ったなし

2019年比で温室効果ガスの60%排出減を

国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は2023年3月に第6次統合報告書を公表しました。この報告書はIPCCが地球温暖化の①科学的根拠、②影響、③排出削減策の3つの作業部会が発表した第6次評価報告書と、土地や海洋などに関する3つの特別報告書をもとにまとめられています。報告は2018年から2022年にかけて行われた調査がもとになっていますが、新型コロナウイルス感染症の影響などがあり、第6次統合報告書は第5次から9年の時を経て公表されました。同報告書では温暖化対策が十分に進んでいない現状に警鐘を鳴らし、2035年までに2019年比で世界の温室効果ガスを60%減らす必要がある、と訴えています。


目標達成に残された時間はあとわずか

温暖化対策の世界的枠組みである「パリ協定」では、各国が世界平均気温を産業革命前に比べ1.5℃の上昇に抑えることを目標に定めています。実際、1.5℃以下に抑えることで多くの気候変動の影響が回避できると言われています。しかし、IPCC第1作業部会の報告書『気候変動2021:自然科学的根拠』によれば世界の気温は既に1.1℃上昇したことがわかっています。さらに国連世界気象機関(WMO)は2022年から2026年の間に1.5℃以上気温が上がる可能性は50%近いと発表しました。私たちに残された猶予期間はそれほどないことがわかります。


カギを握るのは温室効果ガスの削減量

世界の温室効果ガス排出量を2025年までに減少に転じさせ、なおかつ2030年までに2019年比で43%削減、2035年までに同60%削減できないとパリ協定の1.5℃目標達成は難しいとIPCC第6次報告書は訴えます。日本は2030年の温室効果ガスを2013年度比で46%削減するという目標を掲げていますが、その5年後の2035年に2019年比で60%削減を実現するには、今よりさらに踏み込んだ対策が必要になるでしょう。どうやって実現するのか、現在の政策と整合性は取れるのか…といった点が懸念されます。また、統合報告書は2021年10月までのデータにもとづいているため、ロシアのウクライナ侵攻などの影響は含まれていません。実際はエネルギーの安定供給のため、各国における化石燃料の削減は先延ばしになっています。



生態系もうまく活用しながら削減を図っていく

2023年4月15日~16日に札幌で開催された先進7ヵ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合の閣僚声明では二酸化炭素(CO2)削減対策を講じていない化石燃料使用の廃止が盛り込まれました。

また、エネルギー対策のほかにも自然環境の保全や都市の緑化など、生態系を活用した温暖化対策も進めていく必要があります。こうした観点から見ると、事業者だけでなく一般市民ができることはありそうです。

同報告書は「今後10年間の選択と行動が、これからの何千年に影響する」と訴えています。私たちも日頃より無理のない範囲での省エネや食品ロス削減など、今の環境が少しでも長く続くよう意識して行動しましょう。

関連リンク

「日本の気候変動2020」を読み解く
日本の温暖化の現状が詳しく書かれています。

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