世界気象デーで学ぶ「世界気象機関と日本の役割」とは
3月23日は『世界気象デー』。1950年のこの日に世界気象機関条約が発効され、世界気象機関(WMO)が発足しました。世界気象デーはこのWMOの発足10周年を記念して1960年に制定された国際デーで、気象知識の普及や、国際的な取り組みへの理解を促すキャンペーンを行っています。
世界気象機関とは
気象予報をするためには大気や海の状況を把握し、観測データや予報結果を国同士で交換、共有するなど国際的に協力しあう必要があります。
世界気象機関(World Meteorological Organization:WMO)は国連の専門機関で、世界193の国と地域で構成され、世界の気象や気候、水にかかわる情報を集約、発信しています。世界6つの地区協会(アフリカ、アジア、南アメリカ、北・中央アメリカ、南西太平洋、ヨーロッパ)と、8つの専門委員会(基礎組織委員会、測器・観測法委員会、水文委員会、大気科学委員会、航空気象委員会、農業気象委員会、気候委員会、合同海洋・海上気象委員会)で構成され、各地区内での気象業務の推進や調整を行っています。 また、4年ごとに全構成員が出席して世界気象会議を開催し、向こう4年間の予算、事業計画を審議するほか、これにかかわる調整、管理についての検討を毎年行います。
世界気象機関と日本の役割
世界気象機関の目的には『国際的な気象観測の標準化』『各国で連携し気象情報を提供』『航空、航海、水、農業などに気象学を応用、支援すること』などが挙げられます。
近年の熱波、寒波、洪水、干ばつなどの極端なものも含め、気候はさまざまな形で世界中の人々の生活や経済活動に影響を与えます。災害やリスクから人々を守るため、各国気象機関は連携し、目的に応じたより精度の高い気象情報を提供することを責務としています。
日本は発足から3年後の1953年9月10日に加盟し、現在ではアジアにおける気象情報サービスの要として、アジア地区の各国家気象機関と連携し、定期的に議論を行っています。
その他、各国の観測通報の状況を確認し、通報の状況やデータの品質に問題がある場合はその国に連絡、状況に応じて支援を行います。
また、北西太平洋の熱帯低気圧に関する地区特別気象センターに指名されており、日本の責任領域内での台風の発生、進路などについて解析、情報発信をリアルタイムで行い、域内各国を支援、台風に関連する災害から守る役目を果たしています。
より包括的な運用をめざして
世界気象機関ではWMO統合全球観測システム(WIGOS:WMO Integrated Global Observing System)を2020年から運用しています。
以前より各国で運用するさまざまな観測システムや機関を通して地球全体の気象状況を観測できるようネットワークの構築を進めてきましたが、WMO統合全球観測システムでは複数のシステムや実施機関のデータ、異なる技術、目的で行われた観測データなどを統合して取り扱うことができ、より効率的に気象観測を実施、利用できるようになります。 ただし、これら複数の観測データを統合して運用するためにはそれぞれのデータの正確性と適切な管理、運用体制が重要になります。世界気象機関は世界の各地区に運用を支援するためのセンターの設置を進めていて、日本は中国とともにアジア地区のセンターとして、2021年より気象庁がその役割を担っています。
世界中の人々を守るために
気象とひと言でいっても、雨や雪といった天候にかかわることから海洋、地震、津波、火山、ひいては地球環境までさまざまな事象に関係しています。特に日本は活火山を持つ島国のため、アジア・太平洋諸国の気象監視、観測において幅広く国際的な役割を担い、日本国民だけでなく、世界中の人々を守るために役立てられています。毎日なんとなく見ている天気予報や警報は日本や各国で観測したデータの連携があってこそというわけです。
今年の世界気象デーのテーマは『気候変動の最前線で“At the Frontline of Climate Action.”』。 この地球に長く住み続けるためにも、この機会にぜひ私たちを取り巻く気象について考えてみてください。
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