• サステナブルノート
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再生可能エネルギーの代表格!太陽光発電の現在

1990年代から一般に普及しはじめ、2012年のFIT(固定価格買取制度)の開始で一気に拡大した太陽光発電。一般家庭の屋根や空き地、山中など、日本全国のいたるところでソーラーパネルを目にするようになりました。気候変動対策が世界で喫緊の課題とされるなか、「2050年カーボンニュートラル宣言」の達成のため、日本でも再生可能エネルギー(再エネ)の普及が進められています。風力発電や水力発電などさまざまな再エネが開発されつつありますが、一般的には太陽光発電がもっともポピュラーに感じられるのではないでしょうか。
2024年5月現在の太陽光発電に関する情報をまとめてご紹介します。

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【第3回】太陽光発電の動向――コスト低減と周辺環境
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「曲がる太陽電池」ペロブスカイト太陽電池

ここ数年、次世代の太陽電池として注目を集めているのが「ペロブスカイト太陽電池」。2009年に桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授が発明し、実用化に向けた開発が官民で進められています。
これまでの太陽電池との一番の違いは発電層を構成する物質。現在の太陽電池の原料は「シリコン」が国内シェアの95%を占めています。シリコンは地球上に安定的に存在する物質であり大量生産が可能なものの、ソーラーパネルとして製造する際に発電層をガラスで覆い耐久性を上げているため重量があり、設置場所が限られるのが難点です。一方のペロブスカイト太陽電池の発電層は「ヨウ素」を原料としてつくられます。小さな結晶の集合体が膜になっているため、軽くて柔軟なことが特徴です。これをフィルム状に形成することで「曲がる太陽電池」ができあがるのです。ヨウ素の生産量は日本が世界第2位。国内で資源を確保することができるため、輸入に頼らずに製造できる点も大きなメリットです。

【シリコン太陽光電池とペロブスカイト太陽電池の比較】

厚さシリコン太陽光電池の約100分の1以下
重さシリコン太陽光電池の約25分の1以下
発電効率同等(シリコン太陽光電池は14~20%、ペロブスカイト太陽電池は15%以上。1cm角では23%を実現)
製造コストシリコン太陽光電池の5分の1~3分の1


「軽い」「曲がる」というこれまでにない特長により、オフィスや住宅の窓ガラス・壁面や高層ビルといった、従来のシリコン太陽電池では重量や遮光性が課題となり設置できなかった場所にもソーラーパネルが設置可能となります。
ただ、本格的な実用化には「大型化が難しい」「耐久性が低い」といった課題があります。これらをクリアするべく、政府のグリーンイノベーション基金を活用するなどして各地・各企業で実証実験が行われている最中です。実用化の見通しは現在のところ来年2025年頃といわれており、その折にはFITにおける買取価格を優遇する検討もされているそう。エネルギーの国産化という意味でも早期の実用化が期待されます。現在策定中の第7次エネルギー基本計画でも2040年の電源を構成する再エネの1つの要素としてペロブスカイト太陽電池を反映する方針とのこと。官民学を挙げた取り組みが日々進んでいます。

なお、ペロブスカイト太陽電池は少ない光でも発電ができることも大きな特長です。現在は曇りや雨の日は極端に発電量が落ちますが、ペロブスカイト太陽電池が普及すればそのデメリットも補完できそうですね。

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環境ニュース[国際]
2030年までに再エネ3倍
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適地不足解消の一助に!ソーラーカーポート

日本の太陽光発電による発電量は世界第3位ですが、山地が多く平地が少ないため、現在の設置方法ではさらなる拡大には限りがあります。前述したペロブスカイト太陽電池はそんな課題を解消するためのものとして期待されますが、同様に「適地」を拡大する試みとして注目されているのが「ソーラーカーポート」です。駐車場の屋根にソーラーパネルを設置するもので、以前から存在はしていましたが、2024年4月より補助金の対象となるなど普及促進が図られています。

※2024年5月22日(水)現在、一次公募は終了しています。二次公募は6月18日(火)~7月16日(火)(正午必着)が予定されていますが、一次公募で予算額に達した場合、二次公募は行われない可能性があります。詳しくは公式サイトをご確認ください。


ソーラーカーポートは設置方法によって2つのタイプにわけられます。
・太陽光発電一体型カーポート
 駐車場の屋根の建材としてソーラーパネルを使用
・太陽光発電搭載型カーポート
 駐車場の屋根の上にソーラーパネルを設置

土地の有効活用が図れるほか、社屋に付随する駐車場に建設した場合は自社で自家消費しやすいといったメリットがあります。非常時のBCP対策や地域のレジリエンス強化にも役立つことでしょう。

なお、太陽光発電の適地不足は日本以外でも課題となっているよう。フランスでは80台以上の駐車場でソーラーカーポートの設置が義務化されるなど、海外でも注目の集まる設置手法となっています。

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再エネ拡大と人材対策に点検制度の見直しを
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さらなる有効活用のための「蓄電」技術

CO2を排出しないクリーンエネルギーとして重要視される太陽光発電ですが、蓄電技術が十分に普及・発達していない現状ではまだ「安定電源」としてカウントすることはできません。太陽光発電の発電量は天候に左右され、夜間は発電することができないからです。太陽光発電がさかんに行われるエリアでは、よく晴れた昼間の発電量が消費量を上回ることが予測され「出力制御」が行われることがあります。発電能力はあるのに、現在の技術では大量に電気を貯蔵することができないため、稼働を停止させるしかないのです。

※電気は供給量と消費量のバランスが崩れると周波数が乱れ大規模停電を引き起こす可能性があります(同時同量の法則)。


これを解消するために期待されているのが「蓄電」技術。余剰電力を蓄電池に貯めるほか、余剰電力を活用し、水素を製造し貯蔵することもひとつの手法です。蓄電池の容量増加、送配電システムとの連携、変換効率の向上―――など、普及拡大に向けた課題は山積みですが、再エネを安定電源化するには必要不可欠な要素。蓄電技術が拡大するまでの間は、安定的に電力を供給するため従来の化石燃料による発電を廃止することは困難です。太陽光発電のほか風力発電などを含め、再エネの発電がさかんなエリアでは少しずつ系統用蓄電池(電力系統に接続する蓄電池)の設置が進んでいます。2050年カーボンニュートラルに向けて、取り組みは一歩ずつ前進しています。

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再エネ大量導入時代の電力貯蔵技術の役割 蓄電池、揚水、水素などを適所で利用
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まとめ

温暖化対策としてCO2の排出削減は待ったなしの課題。日本が排出するCO2排出量のうち発電におけるCO2排出量は全体の約4割となっており、石油や石炭といった化石燃料からの転換が望まれています。日本は燃料資源に乏しいため、自然の力で発電できる再エネはこれからますます存在感を増していくでしょう。Eco Newsでも太陽光発電をはじめ、再エネの今後の動向に注目していきます!

▶太陽光発電を積極的に取り入れている企業・自治体の取り組みはこちら!

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