【第2回】10倍の導入目標に向け動き始めた洋上風力
前回は日本の温暖化対策の状況と再生可能エネルギー(再エネ)の現状を紹介した。今回は導入拡大が期待される風力発電を見ていく。
発電効率第2位の風力発電
発電効率の最も高い再エネは約80%の水力だ。だが国内では大型水力に適した土地はほとんど残っておらず今後の規模拡大は望めない。そこで水力に次ぐ発電効率(約20〜40%)を持つ風力に注目が集まる。日本では2000年以降、導入件数が急増している。
国内の風力発電は2020年末時点の累積導入量が443.9万kW、2554基で一般的な原子力発電所(100万kW級)の約4基分だ。単年の導入量は2020年に51.6万kW、166基で2019年のほぼ倍になった。
現在は陸上の風力が大半を占めるがトレンドは洋上。政府のグリーン成長戦略でも14の重点分野の1つとし、2040年に3000万〜4500万kWと現状の約10倍の導入目標を掲げている。
「再エネ海域利用法」で前進
洋上風力発電は、名称の通り海洋上に設置した風車で電気をつくる仕組み。基礎を海底に固定する「着床式」が主流で、水深の深い海域では海上に浮かべる「浮体式」が採用される。多様な海底地形がある日本では、地域の条件に適した基礎構造を選ぶ必要がある。
これまでの日本で洋上風力の普及が進まなかった理由に、統一的な海域利用のルールがなかったことが挙げられる。そのため漁業関係者や船舶運航事業者など先行利用者との利害調整が難しく、大きな足かせだった。それを受け2019年4月に施行されたのが「再エネ海域利用法」だ。洋上風力の「促進区域」を指定し、事業者に最大30年間の占用許可を与える。長期安定の事業運営を可能にし、洋上風力拡大を目指す仕組みだ。まず長崎県五島市沖、千葉県銚子市沖、秋田県能代市・三種町・男鹿市沖、秋田県由利本荘市沖の4カ所が指定され、2021年6月には他に先駆けて長崎県五島市沖の事業者が決定した。さらに9月には秋田県八峰町・能代市沖が5カ所目の指定を受けた。
2019年8月末時点の環境アセスメント手続き中(一部は完了)の案件は30カ所、約1300万kW。2040年の目標達成に向けて今後も継続的開発が必要だ。また環境アセスメントの長期化、送電網の容量不足といった課題の解決も欠かせない要素である。
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