• 知っておきたい再エネ
  • 2050年カーボンニュートラルの実現に向け、再生可能エネルギーのさらなる普及と、安全・安心なエネルギーの供給体制構築のために重要なことは何か。現状から読み解きます

【第5回】「ライフサイクルCO2」の排出量が最も低い水力発電

 今回解説する再生可能エネルギー(再エネ)は、安定した動力源として長く運用されてきた水力発電。揚水式を除く一般的水力を見ていく。

再エネの先駆的存在

 水力発電は、川やダムの水が高所から流れ落ちる力を利用して水車を回すことで発電機を動かし電気をつくる方法。一般に利用した水は川に戻される。
 日本で事業用運転を開始したのは1891年。琵琶湖疏水を利用した「蹴上発電所」が最初だ。その後、各地で大規模な開発が進み、1952年度には設備容量が623万kWになり国内供給量の約68%を占めた。やがて電力需要の増加に伴い火力、原子力などの利用が増え、水力の割合は7.8%(2019年度)まで低下した。それでも2021年時点で運用されている水力発電所は、2011拠点、約2191万kWになる。
 水力の利点は、前回掲載の地熱同様、季節や天候による影響の少ない、安定した発電方法であること。発電効率が高いこと(水力は約80%。他の再エネは、風力=約25%、太陽光=約10%、地熱=約8%)。そして再エネだけでなく他の電源と比べても「ライフサイクルCO2」の排出量が最も低いこと。発電所の建設から廃棄まですべての過程(ライフサイクル)で、燃料の採掘、輸送、加工、廃棄物処理なども含め、 CO2排出の総量が少なく、環境負荷は低い。

小水力は地産地消が主軸

 一方課題は、大規模水力に適した場所がすでに開発されていること。利用可能な場所は規模が小さく多くが山間部にあり、開発にはコストや時間もかかる。
 そうした中、注目されるのが出力1000kW未満の「小水力発電」だ。発電量は少なく大きな需要は賄えないが、大規模なダム工事などを伴わないため開発コストが抑えられ環境負荷も少ない。河川や農業用水路の流れを利用するほか、治水ダムの放流水や水道管の水を利用する例もある。つくられる電気は公共施設の維持、災害発生時の非常用電源などに使われる例が多く、その収益を保育料の無償化に充てるといった地産地消型の活用がなされている。
 また設備の維持管理などを通して地域の雇用促進・活性化につなげようと自治体が事業主体になる例も多い。国の各種支援事業や関連法改正による手続きの円滑化も進む。地域に眠る水資源が小水力発電により有効活用されていく。

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