貴重な教訓を共有し次の災害へ

復興庁「東日本大震災復興政策10年間の振り返り」

 復興庁は2023年8月、「東日本大震災復興政策10年間の振り返り」を公表した。復興事業に関する国の制度や組織、施策の経緯などを評価や課題とともにまとめ、震災で得られた貴重な教訓を一元的記録として残した。
 国は東日本大震災の発災から2020年度までの10年を「第1期復興・創生期間」としている。復興庁は、その間に行われてきた復興への取り組みは日本だけでなく世界で共有すべき貴重な教訓を含んでおり、記録をまとめ残しておく責務があるとして8章にわたる膨大な文書を公表した。
 1〜3章は被害状況などの概要、随時つくられた法制度や組織体制の変遷など総論的項目をまとめている。4〜8章は被災者、まちづくり、産業、原子力災害、他主体との協働、記憶の継承など各論に触れる。どの時点でどんな取り組みが実施されたかの情報を詳細に整理し、それに対する評価や教訓なども記載した。
 例えば2章の組織体制では、発災から3ヵ月後の復興対策本部、約1年後の復興庁設置が遅かったとの指摘を示し、その後、新規の立法を介さず閣議決定で対策本部が発足できるよう制度改正がなされた経緯も記す。また、2章の被災者支援ではコミュニティ形成を援助する活動など人のつながりまで施策対象にしたのは画期的で、以降の災害対応にも生かされているといった有識者の評価も加えている。
 復興庁は今後起こる大規模災害の際、今回の文書が、国や自治体の関係者、ボランティアや民間団体などに広く活用されることを期待している。

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