• All for JAPAN
  • 東日本大震災から復興への歩みをみせる被災地の企業や日本テクノの取り組み

全社一丸で困難に打ち克つ Scene 57

 2018年7月に西日本を襲った平成30年7月豪雨。岡山県倉敷市真備町では、河川の氾濫により多くの家屋が浸水被害にあった。同所で竹製の家具を製造する株式会社テオリも被災した。
 「ほかの地域では土砂崩れまで発生した豪雨の中、従業員やその家族に人的被害が出なかったのは不幸中の幸いでした」と話すのは代表取締役の中山和幸さん。自宅は2階まで水が押し寄せたが、会社が気がかりでその翌日に出社した。本社工場の1階はすべて水に浸かり、設備の8割は使用不能で、納品前の商品や製造に使う資材も泥を被った。被害総額は2億円。大変なことになったと天を仰いだが、周囲の助けにより驚くべきスピードで復旧していく。
 まず始めたのは従業員総出での後片付け。工場内の清掃のほか、洗浄すれば使える設備もわずかにあったため、整備して復旧させた。
 時を置かず、顧客を含む取引先が手伝いに駆けつけた。東京から来てくれた人もいた。「良い人たちとご縁があって仕事ができていたのだと、そのとき改めて実感しました」。そうして1ヵ月後には工場の一部稼働にこぎつけた。国からの補助金も復興を大いに後押しし、設備の購入資金などに充てた。被害を免れたもう1ヵ所の工場でできる限り稼働を続けたが、納品を待つ顧客のためにも一刻も早く元の体制に戻したい。懸命の復旧作業を続け、年明けには原状復帰を遂げた。

1階部分は人の身長ほどまで浸水した

 同社の製品の魅力の1つに挙げられるのが独自性。真備町は昔から筍(たけのこ)の名産地として知られてきたが、竹材を使用した製品は生産されていなかった。そこに目をつけたのが、創業者で先代社長の父・正明さん。当時は木材製品製造の仕事をしていて、その技術を参考にしながら、竹で家具をつくるにはどうしたらよいかと試行錯誤を重ねた。
 竹は固くて繊維がまっすぐなため割れやすい。それを補えれば木材より高い強度を実現できる。その考えをもとに薄くスライスした竹を互い違いに重ね合わせプレスするという加工技術を確立した。同じサイズでは竹の方が比重が大きいが、強度が高いため、一般的な木材よりも細く薄くできる。そのため、製品全体で見ると木材製品よりも軽く仕上げられるのだ。このような工法は国内でも珍しく、出来上がりの風合いも木材製品とはまた違った味わいがある。
 資材の竹は、筍農家が間伐したものを買い取っている。おいしい筍を育てるためには適度に竹を伐採する必要があるが、用途がないため燃やすか朽ちるまで放置されることがほとんどだ。それを買い取るので、農家にとっては利益になる。管理された竹林の適度な年齢のものが仕入れられるし、環境負荷の低減にもつながる。
 同社が復旧を急いだ背景には、製品の納入を心待ちにしている顧客の存在があった。その年の9月に開業予定だった福岡県のホテルでは、フロントの受付カウンターやロビーのソファなど、多くの調度品を依頼していた。8月初旬の納品予定で、豪雨被害があったちょうどその時期に製造にとりかかっていた。製作中のものは廃棄になり、工場稼働もままならない。契約は破談になると思われたが、先方は「オープンを延期するので、よいものをつくってください」と待ってくれた。後日無事納品できたあと、そのホテルを社員研修の場として利用させてもらった。ビジネスだけではない温かい交流が生まれている。
 「リーマンショックや主要な取引先の撤退など、ほぼ10年おきに困難に見舞われています。その度に従業員と一丸となって乗り越えてきました。水害はもう起こらないよう祈るばかりですが、今後また何かあっても同じように立ち向かうだけです」。中山さんの言葉からは、どんな苦境にも負けずものづくりに向き合う実直な社風が見て取れた。

こぼれ話

 平成30年7月豪雨の際、テオリさんの周辺で氾濫した主な河川は高梁川と小田川。それ以外にも多くの支流があり、高梁川と小田川の合流地点で溢れた水が細かな支流を遡り、結果広域にわたり浸水してしまったそうです。今では元通りの毎日を取り戻していらっしゃることに安堵しつつも、社屋の壁面には人の背丈よりも高いところに浸水の跡が。取材に伺った日はよく晴れていてのどかな風景が広がっていただけに、当時のことを思うと肝が冷えました。
 お話はショールームで伺ったのですが、とてもお洒落な家具が勢ぞろい!木の家具とはまた違った香りに包まれて、なんだかリラックスしてしまいました(笑)。手触り、肌辺りのよさや、テーブル板面の美しさにうっとり。記事内のエピソードにもあったように、ホテルの開業を遅らせてでも「この会社の製品を使いたい」と思わせる魅力があることが、少しの間テーブルについてお話ししただけでも伝わってくるようでした。

テオリのショールーム。室内も製品のもつ柔らかい雰囲気に満ちている

関連記事一覧