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  • 東日本大震災から復興への歩みをみせる被災地の企業や日本テクノの取り組み

震災で得たものをこれからのためにScene 29

 宮城県の仙台市内に13施設のビジネスホテルを展開する松月産業 株式会社は、地域に根差したサービスを低価格高品質で提供し続ける企業。常に「お客様を大切にする」姿勢を持つ。だからこそ、東日本大震災の当日も宿泊者を受け入れた。「目の前のお客様を見て、何としても営業を続けなければ、と無我夢中でした」と代表取締役の今中美恵さんは当時を振り返る。

全力で受け入れたあの日

代表取締役の今中美恵さんとアシスタントマネージャーの髙橋渉さん


 客室以外のロビーや会議室にまで人があふれた。翌朝からは食糧確保にアシスタントマネージャーの髙橋渉さんをはじめスタッフが動く。彼らは自分自身も被災者だ。それでも懸命に力を尽くす。味噌、醤油、米など近くの商店にもお願いをして買い続けた。確保したものを「これで何日持つか」と計算しながら各ホテルに配る。ボイラーや配管などの設備は、取引業者の協力により1週間で仮復旧できた。完全とはいえない状態の設備でも、誠意を持って施設を提供することで多くの人々から感謝の言葉を受けた。
 あれから5年余り。今でも同社では被災した子どもたちのため「東日本大震災みやぎこども育英募金」による支援を継続している。
 最近では外国人旅行客の利用も増えた。しかし、仙台の飲食店などをみると、英語のメニューや接客ができるお店がまだ少ない。英語の看板を見て入った店がメキシコ料理店だったと残念がる宿泊客もいた。そうした外国人旅行者に対し、自分たちは何ができるのか。また、仙台を拠点として東北6県を回る国内からの多くの利用者に対し、どんなサービスが最適なのか。常に考えている。
 「震災で得たものは大きいですね。私たちができることは、もっとたくさんあると思えるのも、その1つです」と今中さん。今後は仙台だけではなく東北6県の拠点として地域に根ざしたサービスの充実を図っていく。「がんばります」と今中さんと髙橋さんは声を揃えた。
こぼれ話

 「星の明るさに驚いたあの日の夜が遠くなっています」と話し始めた今中社長。地元に根差した企業として先代の意志を引き継ぎ、現状に満足せずに私たちには何かできるはずと考え続けている。訪日インバウンド対策も次々と出てくる。お客様のために何ができるかと考えての対策だからこそ、心がこもる。様々な企業努力と地域への貢献を意識する今中社長に迷いはない。「あの規模の震災をもう一度、乗り越えることはできないと思う」と話すが、きっと軽々と乗り越えてしまうパワーを感じる取材でした。


 久しぶりに仙台の牛タンを食べました。やっぱり美味しいです。震災以降、この取材で10回以上、仙台に来ましたが、牛タンは7回です。ランチが2回、ディナーが4回。そして朝食で1回。
 さらに、仙台は魚も、日本酒も、ご飯も美味しい。日本海とは違う美味しさがあります。

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