サステナブルノート

省エネ、エコといった日常の暮らしに彩りを添える豆知識から、地球温暖化や環境問題まで、サステナブルな暮らしを送るのに役立つ広範囲な情報を紹介。また、随時特集と銘打ってその時期ホットな話題を深掘りします。

渡り鳥を取り巻く環境の変化と生態系への影響


毎年5月と10月の第二土曜日は「世界渡り鳥の日」です。国連が主導する国際的な記念日で、目的は渡り鳥とその生息地の保全。春・秋の渡りのピークにあわせて、世界各地でイベントや野鳥観察会が開催されます。今年の世界渡り鳥の日は5月9日と10月10日です。毎年テーマが設定されていて、2026年のテーマは「すべての鳥が大切 ―あなたの観察が重要!」。野鳥観察を通して自然とのつながりを強め、環境保全への関心を高める狙いがあります。

ツバメやハクチョウなどの渡り鳥は、日本にも多く飛来します。繁殖や越冬のため南北に移動しますが、その生態には近年の気候変動により少なからぬ影響が出ています。今回は渡り鳥の生態と環境問題を絡めて考えてみましょう。


渡り鳥とは


繁殖地と越冬地が異なり、季節ごとに決まったルートを定期的に長距離移動する鳥を指します。主な目的は食糧の確保、もしくは厳しい寒さを避けること。冬になると昆虫食の鳥は餌となる昆虫を、魚を食べる水鳥は凍らない水面を求めてそれぞれ南下します。渡り鳥は網膜や脳に地磁気を感じる器官があるため、長い距離であっても目的の方角へ正しく飛ぶことができます。移動距離は種類によりますが、確認されているだけでも、年間約80,000kmもの距離を移動する「キョクアジサシ」(北極と南極を往復)、約12,000kmを9日ほどかけてノンストップで飛行する「オオソリハシシギ」(アラスカ~ニュージーランド間を移動)といった驚異的な移動をみせる種もいます。日本に飛来する渡り鳥として有名なハクチョウやツル(シベリア~日本間を移動)などは、比較的体重が重い種のため、飛行距離は2,000~3,000kmほどといわれています。
程度の差はあれ長距離を飛行するため、移動前には餌をたくさん食べてエネルギーを蓄えます。途中で休憩をはさむ種もいますが、飲まず食わずで飛び、目的地へ着くころには体重が半分ほどになってしまうこともあるそう。また悪天候などアクシデントにより道中で命を落とすことも少なくありません。渡りは命がけの移動なのです。

「渡り」別の鳥の種類

種類行動飛来する季節
夏鳥南方から飛来し、日本で繁殖するツバメ、カッコウ、オオルリなど
冬鳥北方から飛来し、日本で冬を越すカモ、ハクチョウ、ツルなど
旅鳥渡りの途中で休憩や餌場として日本に飛来する春・秋シギ、チドリなど
漂鳥ひょうちょう渡り鳥ほどの距離ではないものの季節により山地と平地などを移動するヒヨドリなど
留鳥りゅうちょう一年中同じ地域に生息するスズメ、カラスなど

このほかにも、迷鳥(台風などの偶発的な理由により現れる、本来そこにいないはずの鳥)や籠抜け鳥(ペットとして飼われていたが籠を抜け出し、生息・繁殖するようになった鳥)といった分類もあります。


気候変動による影響


・渡り鳥が「渡らない」
近年の温暖化の影響で、本来渡りをするはずの鳥が渡らなくなる現象が確認されています(留鳥化)。冬に昔ほど気温が下がらなくなったことにより、冬でも餌を確保できるなど、「渡るリスク」が「留まるリスク」を上回ったことによる変化と考えられます。また、渡ったとしても越冬地が本来の飛来地よりも北上しているケースも見られます。

・餌が確保できない
温暖化により、渡り鳥が雛に与える昆虫の発生時期にズレが生じ、繁殖のために飛来しても餌が確保できないという現象も。このため、せっかく雛が孵っても十分な栄養を摂ることができず、成鳥になるまえに死んでしまう割合が高くなっています。本来の時期・場所で繁殖しにくくなり個体数が減っている種も報告されています。また、成鳥の小型化も確認されています。

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環境破壊による影響

この他にも、都市・農地の開発のための環境破壊や気候変動による地形・植生の変化が、渡り鳥の生態にさまざまな影響を与えています。

・湿地や干潟の減少
 気候の変化や埋め立てにより湿地や干潟が失われ、渡りの途中で休憩・採食できる場所が減っている。
・森林破壊
 繁殖地や越冬地の森林が失われ、生息可能な場所が減っている。
・化学物質による汚染
 農薬や殺虫剤などに含まれる化学物質を餌とともに取り込んでしまい、体内で濃縮された結果、繁殖率の低下につながっている。
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渡り鳥が渡らなくなったら?

渡り鳥の保護・保全は、渡り鳥そのもののためだけではありません。渡り鳥は季節によって移動することで、各地域の生態系のなかで大きな役割を果たしています。たとえば植物にとっては、花粉の受粉を助け、種子を運んでくれる存在です。肉食動物にとっては捕食することでエネルギー源となる食物連鎖の一部。また海洋で魚を食べフンを排泄することで、窒素やリンといった栄養分を陸地へ運ぶ役割も担っています。

先述した理由により個体数が減少傾向にある渡り鳥ですが、その消滅によりこれらの機能が失われ、広い範囲の生態系に影響が出る可能性があるのです。

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身近でできるバードウォッチングが貴重なデータになる


渡り鳥は国境を越えて移動します。繁殖地、越冬地、中継地すべての保護・保全が必要であり、そのためには国際的な枠組みが必要です。世界渡り鳥の日には日本野鳥の会や環境省などが主体となり観察会や保護キャンペーンなどのイベントが各地で開催されますので、参加してみてはいかがでしょうか。中継地として飛来するのは干潟や河川、水田などが多いですが、都市部の公園や緑地に訪れる鳥もいます。双眼鏡の貸し出しサービスがある公園もあるので、気軽に楽しんでみてください。

バードウォッチングで見つけた鳥は野鳥観察データベース「eBird」に登録してみましょう。いつ、どこに、どんな鳥がいたかを記録する世界最大の市民参加型データベースです。登録された情報は貴重なデータとして野鳥の生態研究や保全活動の一助になります。


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