
品質保持と環境配慮を両立 #44/株式会社 くもん出版
「一人ひとりの可能性を発見し、その能力を最大限に伸ばす人材育成による地球社会への貢献」を理念とするKUMONグループ。62の国と地域に約2万3000の教室を展開し学びの輪を広げている。環境問題も重要な経営課題と位置づけ、グループ各社に環境委員を配置し事業内容に合わせた活動を行っている。
株式会社くもん出版(東京都品川区)は公文教育研究会の出版部門として誕生した後、1988年に独立。出版物、知育玩具をはじめとした教育関連商品の制作・販売を担う。事業活動に伴う環境負荷の把握と低減に取り組むため、電気使用量、二酸化炭素(CO2)排出量、紙使用量、古紙リサイクル量を集計しホームページ上で公開している。
商品開発では「現場のコスト意識や改善意識が自然と環境対策になっていた」という。例えば年間5万個以上販売する人気商品「くもんの日本地図パズル」。ピースをはめるパネルを薄くしたことでプラスチックの使用量を減らし、外箱の改良にも成功した。輸送時に箱詰めする段ボールのサイズも小さくでき、一度に運べる数が増え輸送コストも軽減された。


パズルのピースの大きさは変えず、全体のサイズを30%小さくできた「日本地図パズル」。
その段ボール箱は以前は倉庫で一度詰め替えていたためその都度リサイクルに回していたが、破損がなければ極力そのまま使用するリユース徹底の工程に変えている。
同様の定番商品「くもんの幼児ドリルシリーズ」は、使用する紙の厚みを見直し紙使用量を削減した。39冊あるシリーズの中で最もページ数の多い「ひらがなおけいこ」ですでに用いていた紙を、すべてのドリルで使うようにした。破れにくく書きやすい実績があったので切り替えのハードルは低かった。
新発売の知育玩具「つみつみスロープ」では、他の類似商品では擦過痕がつかないよう各パーツをビニールに包んでいたところを、箱にぴったりと収まる状態にして個包装を省いた。併せて、説明書用のビニール袋も廃止している。
そして大切なのはこれら資源削減はすべて品質に影響のない範囲で行うこと。使用感や見た目が変わらないことは消費者の安心感に直結する。今後は輸送時の効率化や店頭陳列時の見栄えを念頭に置き、可能な範囲でパッケージサイズの均一化も図りたいと考える。
商品開発に消費者ニーズを取り入れることも忘れない。近年学校教育の現場では環境教育に活用できる書籍の需要が高まっている。学校や図書館で特に要望が多く問い合わせも入るため、独自で企画したり、海外の優良出版物を翻訳し販売したりしている。環境を題材とした書籍がきっかけで他企業とのコラボレーションが実現し子ども向けの体験学習プログラムにつながった例もあった。
現場努力が環境配慮につながっているという同社。グループ全体で真摯に環境に向き合う姿勢が従業員に浸透している証でもある。全世界の環境経営の取り組みを環境ニュースとしてKUMONグループ各社に年4回、日本語と英語で配信し情報を共有する。記事は国内外の全社で作成を担当する。ワールドワイドな環境コミュニケーションが活発だ。
各種原材料の価格が高騰する昨今、バイオプラスチックへの切り替えで環境配慮する手法もあるが、あえて商品開発の工夫で努力を続ける。現状でできる限りの改善を継続しながら、付加価値の考え方を社内で統一し、商品にどう反映させていくか。環境に配慮したモノづくりの努力は続く。
こぼれ話
町の学習教室として長年親しまれてきた公文式。子どもの頃に通っていた方も多いのではないでしょうか。かく言う筆者も幼稚園の頃から通い、ひらがなや簡単な漢字、計算を習った記憶があります。教室にいる時間内に、どれだけのプリントで学習し、はなまるをもらえるか、自分の限界に挑戦したものです。やればやっただけ進捗が実感できる学習スタイルは幼心にも響き、勉強がすごく楽しかった記憶があります。このような学習体験が記憶に残るからこそ、デジタル化の時代ではあるものの、教室ではプリントを使った学習を継続していく方針だそうです。
削ってはいけない部分があるからこそ、削れるところでは削る。その一環として紙資源のリサイクル、リユースに力を入れているとのことですが、出版部門として独立したくもん出版においてもグループ共通の取り組みとして改善を続けています。本文中に記載した紙厚や包装の簡易化など、教材を使う子どもたちに気付かれることは少ないかもしれませんが、環境問題に対する価値観や取り組みが事業全体に浸透し、子どもたちにも伝わっていくのだろうなあと感じました。

社交的な皮をかぶった人見知りなので、取材のときはいつもドキドキしています。
話し手さんがついぽろっと本音を話してしまうようなインタビューをめざしています!
エネルギー分野、特に次世代の燃料や発電・蓄電技術に興味津々です。
好きな食べ物:生牡蠣(あたっても食べ続けています)。
趣味:オンラインゲーム(休日はもっぱら、光の〇士としてエオ〇ゼアを旅しています)。