【第15回】全施設にCO2排出ゼロの電力/千葉市

廃棄物発電を自己託送

 千葉市は2026年度に約750の市有施設すべてでCO2排出量ゼロの電力に切り替える。具体的には市内若葉区北谷津町に新設する清掃工場などで廃棄物発電を行い、その電力を自己託送で市有施設に送る。不足分は太陽光発電設備の増強を行い、さらに足りない分は電力会社より再生可能エネルギー(再エネ)由来の電力を購入する。

「現在、新工場からの電力需給を一元管理する独自システム(エリアエネルギーマネジメントシステム)の構築を進めています。自治体独自のシステムとしては、一元管理する施設の種類、数において国内最大規模になる予定です」(環境局 環境保全部 脱炭素推進課 事業調整担当課長 石井秀岳さん)

 この取り組みで見込まれる温室効果ガスの排出削減量はCO2換算で年間約6万8,000トン、電力コストも約5億円削減できる予定だ。

 

新設する清掃工場の完成予想図

 

排出削減量は順調推移

 2020年11月にゼロカーボンを宣言し、2022年11月には脱炭素先行地域に選定された千葉市。平均気温が上昇し、自然災害による被害が相次いでいることから、脱炭素は無論、災害に強いレジリエントなまちづくりも目指している。「2019年の秋に本市を台風が直撃し、強風や倒木の被害によって市内各所で停電が発生しました。その経験を踏まえ、公民館などの避難所に再エネ発電と蓄電池の導入を進めています。これらは平時から利用できるので温室効果ガス削減にも一役買っています」(環境局 環境保全部 脱炭素推進課 課長補佐 竹内公平さん)

 2020年度の市内全域のCO2換算の温室効果ガス排出量は2013年度比で約18.1%減少の1292万トン。この数値について竹内さんは「産業部門では多くの企業が、それぞれの目標に沿って着実に行動し、業務部門でも省エネ設備導入や電力自体の脱炭素化等が進み、排出量の減少につながっていると考えられます」と説明する。

 

中小支援にも力を注ぐ

 脱炭素に取り組む中小企業を支援する仕組みもつくった。2024年4月に始めた千葉市脱炭素推進パートナー支援制度だ。認定には「パートナー」と「パートナープラス」の2種類があり、パートナーは省エネ設備導入補助金が活用でき、パートナープラスはそれに加え、市の制度融資で金利などの優遇が受けられる。また、パートナー向けの脱炭素経営フォーラムやセミナーの開催、先進的な取組みに対する表彰なども行う予定だ。2024年11月現在でパートナーに92社、パートナープラスに7社が登録している。

「私たちは、脱炭素の重要性はわかっていても、何から取り組めばよいか悩んでいると考えている中小事業者を支援していきたいと考えています。取り組みを通じて意識の変容が促され、環境問題の解決と経済の好循環が実現することを願っています」(竹内さん)

 官民を挙げた脱炭素に向け、千葉市は着実に歩みを進めている。

(ゼロカーボンシティの連載はこちらをもって終了いたします。ご愛読いただきありがとうございました)

 

こぼれ話
 この取材が決まった際、千葉市は2026年度に約750の市有施設すべてでCO2排出量ゼロの電力に切り替えることを発表した直後でした。当初は同市のモノレールなどを活用した脱炭素の取り組みを紹介しようと考えていたのですが、ニュースバリューの大きい今回の取り組みを伺い、急遽予定を変更しました。 また、千葉市では幕張メッセのLED化やバイオマス熱ボイラーの活用などを通じ「グリーンMICE」にも力を入れています。MICEとは「Meeting」「Incentive travel」「Convention」「Event」の頭文字であり、国際会議などのビジネスイベントを指す言葉です。幕張メッセを擁する千葉市ならではのユニークな取り組みですね。ほかにも紙面に載せきれないいろいろな取り組みを伺い、千葉市が脱炭素に本気で取り組んでいることがよくわかりました。

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