コーヒーが飲めなくなる?コーヒーの2050年問題

「コーヒーの2050年問題」を知っていますか?気候変動の影響で2050年までにコーヒーの栽培に適した栽培地が半減し、収穫量が激減するといわれています。日本はコーヒーの消費量が世界4位の「コーヒー消費大国」です。勉強や仕事の合間に、友人とおしゃべりするときに、日常生活のなかで何気なく飲んでいるコーヒーが当たり前のものではなくなってしまうかもしれません。
今回は私たちの生活を彩るコーヒーと気候変動の問題について考えてみましょう。
世界と日本のコーヒー事情

世界のコーヒー生産量は年間約1060万トン、消費量は年間約1050万トンに及びます。紅茶とともに世界中で親しまれている飲み物の一つです(2024年10月1日~2025年9月30日 国際コーヒー機関資料より)。
コーヒー生産量と消費量の国別ランキング
| 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | |
| 生産量 | ブラジル | ベトナム | コロンビア | インドネシア |
| 消費量 | アメリカ | ブラジル | ドイツ | 日本 |
2025年の日本の年間消費量は約39万トン(全日本コーヒー協会発表)。1人1日あたり1.5~2杯を消費している計算になります。日本はコーヒー豆のほぼすべてを輸入しており、主な輸入先はブラジル、ベトナム、コロンビアです。
コーヒーの消費は欧米が中心でしたが、近年ではライフスタイルの変化や経済成長を背景に、中国や東南アジアでもコーヒーを飲む人が増えています。それにともない、世界のコーヒー消費量は今後も増加することが予測されています。
コーヒーノキについて

コーヒー豆が取れるコーヒーノキの栽培には、種によっても異なりますが以下のような生育条件が必要です。
・年間平均気温20℃前後
・年間降水量1,500~2,500mm
・水はけがよく肥沃な弱酸性の土壌
・強すぎない適度な日当たり
・昼夜の気温差が大きい
これらの条件を満たしている地域が、赤道を挟んで北緯25度から南緯25度までの「コーヒーベルト」と呼ばれる一帯です。コーヒー生産量上位のブラジル、ベトナム、コロンビアなどはすべてコーヒーベルトに属しています。
コーヒーノキには約130もの種が存在するといわれていますが、飲用とされているのはアラビカ種、カネフォラ種の中のロブスタという品種、リベリカ種の3種類のみ。そのなかでも豊かな酸味や香りが楽しめるアラビカ種が世界で流通しているコーヒーの70~80%を占めています。
気候変動がコーヒーにあたえる影響
コーヒー、なかでもアラビカ種は気候の影響を非常に受けやすい作物です。そのため、現在のペースで気候変動が進むと2050年までに栽培適地が半減するといわれています。具体的な要因を見てみましょう。
・気温の上昇
コーヒーの栽培には年間平均気温20℃前後の、寒すぎもせず暖かすぎもしない気候が適しています。気候変動により気温上昇が続くとコーヒーの成長が阻害されてしまいます。
・降水量の増加・減少
コーヒーの栽培には適切な時期に適度な降水量が必要です。コーヒーベルトの多くの地域は雨季と乾季にわかれていますが、気候変動によりその時期にずれが生じる、雨が多く降りすぎてしまう、もしくは雨が降らず干ばつが発生するといった現象が起きると栽培に影響が出てしまいます。また、ハリケーンの大型化はコーヒーノキの倒木や実の落下などの被害をもたらします。
・病害リスクの増大
「さび病」はカビが原因で起こる植物の感染症です。さび病に感染すると、葉が落ちて光合成ができなくなり、2~3年で木が枯れてしまいます。さらに木から木へと伝染するため、周辺一帯のコーヒーノキが全滅してしまいます。降水量が増えると湿気が多くなるため、カビ由来のさび病に感染するリスクが高まります。特にアラビカ種はさび病に弱く、発生すると大きな影響を受けます。
このような状況が続くと「コーヒーの栽培は安定しない」と考えるコーヒー農家の転作や廃業が増え、さらに生産量が減少するという悪循環が発生します。前述のとおり消費量は増加傾向にあるので、生産量が減少すると、需給バランスの関係でコーヒーの価格は上昇します。実際に2025年の世界のコーヒー価格は過去35年間で最も高い水準となりました。
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今後もおいしいコーヒーを飲むために

気候変動はすでに生産地に大きな影響を与え始めています。今後もコーヒーを安定的に生産・消費するために、どのような対策が取られているのでしょうか。
・生産地の移動・拡大
今までは寒すぎてコーヒーの栽培に適さなかった地域で栽培の取り組みが始められています。具体的にはコーヒーベルト内の標高2,000mを超える高地や、コーヒーベルト外のアメリカ南部やヨーロッパ南部、中国南部などです。日本でも比較的暖かい沖縄や鹿児島、小笠原諸島で栽培が行われ、実際に商品化もされています。
・アラビカ種以外の可能性を探る
現在飲用とされている3種のなかで、ロブスタ、リベリカ種はアラビカ種に比べ風味がやや劣るといわれています。しかしロブスタは病害に強く、安定した生産が見込めるというメリットがあります。近年ではロブスタの中でも品質の高い「ファインロブスタ」が世界的に高い評価を受けています。もう1つのリベリカ種も加工方法により味のコントロールができることがわかってきました。また、これらの種類以外にも気候変動に耐えうる品種の開発が進められています。
・コーヒー豆を使わないコーヒーの開発
世界各国でコーヒー豆を使わないコーヒー(ビーンレスコーヒー)の開発が進められています。植物由来の原料や緑茶由来のカフェインなどを組み合わせコーヒーの味や香りを再現しており、次世代の代替コーヒーとして注目を集めています。
「同じ豆なのに味わいが変化した」など、コーヒーの質の変化はすでに現れているといわれています。気候変動がコーヒーに与える影響は避けられませんが、今後もおいしいコーヒーを飲むためさまざまな技術の研究・開発や品種改良が進められています。コーヒーを飲みながら、その背景で起こっている気候変動やコーヒーの未来について目を向けてみませんか。
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