【第21回】事業も社員も成長するSDGs
企業の事業内容に沿ってSDGsの目標達成を考える本コーナー。今回は製造業のSDGsに関する取り組みを紹介する。
埼玉県川口市に本社を置く和光紙器株式会社。包装資材全般の開発・設計・製造を手掛け、近年では99%資源を循環させる再生材料の開発にも力を入れる。SDGs活動の特徴は、事業活動と社員の成長に連動している点。代表取締役の本橋志郎さんは「会社にとってよいことは社員自身にとってもプラスであるべき」と考え、社長に就任した2019年頃から実利あるSDGs活動に着手し、埼玉県環境SDGs取組宣言企業として毎年報告書を提出している。
同社のSDGs活動は主に「資源循環」「社会貢献」「地域貢献」に重心を置いているが、当初から大きな目標を設定していた訳ではない。まずは事業所周辺の清掃活動やペットボトルのキャップを集めるといった「手が届きそうな目標」から設定し、小さな成功体験を重ねることで”自分たちにもできる”という自信や肯定感を体験していった。これら小さな「目標達成」を企業理念と連動させることで、会社が目指すべき方向を社内に浸透させた。

社員全員が「私の出来るSDGs活動」の目標を記入する
「WAKOH NOTE」。毎年初に配布され、その年の行動指針になる
社員教育にもSDGsを活用している。例えば勉強会におけるディスカッションでは多様性を認め合う価値観を学ぶ。「自分はSDGsの考え方は合わない」と発言する社員がいたとしても、そうした考え方があることは認め、どうすれば違いを乗り越え目標を達成するか、そのプロセスを生み出す力を導いていく。勉強会の効果もあり、社内では意見を認め合う風土が形成されてきている。
地域貢献活動の一環として近隣の中学校の生徒を招待して職場体験会も開催した。生徒たちにものづくりの職業を体験してもらうのが目的だが、実施する過程における企画立案、渉外、運営といった作業が「自分で考え実行する力」を養っていく。発想力も鍛えられ、質のよい商品開発のアイデアが生まれるようになった。
これらの集大成として年に1度「SDGs個人発表会」を事業所ごとに開催する。社員全員が年間の活動を発表する場で、ここでは回を追うごとに各人のプレゼン力や資料作成能力が向上していくのがわかる。「人前で話すのが苦手だった社員が堂々と発表していたり、想像を超える報告も飛び出したりで、毎回成長に驚かされます」と本橋さんの顔はほころぶ。

代表取締役の本橋志郎さん
スキルだけではなくエンゲージメント向上の効果も大きい。BtoBの事業なので、社員は家族に実際の商材を見せる機会がなく、どういう仕事をしているか説明しづらい面があった。だが、職場体験や工作教室といった話題であればしやすい。清掃活動のほか子ども食堂やフードドライブといった一緒に参加できる活動もある。会社が受賞した社会貢献の表彰などを伝えれば、会社や仕事に対して一層の誇りややりがいが生まれる。
成功の秘訣は「トップダウンでなく現場に任せること」と本橋さんは言う。経営側としては方向を示し誤ったときの軌道修正に注力し、実際の取り組みは社員自らが決める。それが納得感、達成感をより大きくする。
しかしそれも最初からすべてうまく運んだのではない。社長就任の2年ほど前から、自社の特性に合った経営を模索し構想を練った。活用したかったのは、元から定評のあった社員の団結力。その性質に合う仕組みを用意できたことが歯車を勢いよく回す要因になった。
SDGs活動で社員が成長し事業も成長する。本橋さんは「資源を再生させる仕事をしているので、”循環させる”ことは得意なんです」と笑った。個人単位の活動から事業所単位、そして会社全体へと活動の規模とレベルは進化している。中小企業には珍しくCSRレポートの発行も行う。今後も経営理念とSDGs活動に同じ方向性を持たせる取り組みを進め、より大きな循環を生み出していく。
こぼれ話
本文中の写真でご紹介した、SDGs活動の目標を記入する「WAKOH NOTE」。1年の初めに全社員が本橋さんと面談し、そこで目標を宣言します。代表取締役に直接宣言するなんて…と、少し緊張してしまいそうですが、取り組み内容には正解を決めないのが本橋さんのルール。過去には【地域・食料】という観点で、地域の飲食店でどのようなメニューが提供されているのか実際に食べに行って確認する、という取り組みをされた方もいたとか。地域のことを知る機会にもなりますし、ユニークで素敵だなと思いました。今年はマイコンポストがブームだそうです!
活動は今年で6年目を迎えます。最初はみなさん手探りでしたが、次第にそれぞれの活動について自発的に話すようになるなど、社内のコミュニケーションがより活発になったそうです。取材の最後に社内見学をさせていただいたのですが、すれ違う社員の方と本橋さんが気さくにお話されていたのがとても印象的でした。
ちなみに今は8割以上の方がSDGsのどの目標が何番か言えるとのこと。すごいですね!!






















































