• 中小企業のSDGs
  • 企業の事業内容に沿って、どのようなSDGsの目標達成が図れるのかを解説していく

【第6回】食品製造業 廃棄されていた野菜を生分解可能な容器に再生(GF 株式会社)

企業の事業内容に沿ってSDGsの目標達成について考える本コーナー。今回は食品製造業の取り組みについて事例を紹介する。

食品製造業における SDGs を考える際に、原料廃棄などのロス削減は避けて通れない。これは目標12の「つくる責任、つかう責任」をはじめ複数の目標と関係する。中小企業が単独でできることは少ないと思われがちだが、廃棄される野菜類の再利用に独自に取り組む企業もある。今回紹介するGF 株式会社(大阪府大阪市)だ。

 野菜をカット加工し、外食チェーンや小売業者などに卸す食品製造企業。社長の王志敏さんは「カット野菜は便利ですが皮や芯などの廃棄部分も少なくない。野菜づくりの現場では規格外のため捨てられる農作物も多く、企業の社会的責任(CSR)が求められる今、当社にできることはないかとずっと考えていました」と話す。そこで2018年、金融機関と相談しSDGs社債を発行。これを原資に廃棄部分や規格外野菜の有効利用の研究を始めた。
 翌2019年、生分解可能な食品用容器「VAM 」(Vegetable Alternative Model=新たな野菜の活用モデル)が誕生する。原料はこれまで廃棄されていた野菜とでんぷん。それを裁断・攪拌し、水分を加えて型に流し込み、食品容器に成形する。特許出願済で商標登録も終えている。

 生分解とは、微生物の働きにより分子レベルまで分解して自然界へと循環していく性質のこと。「VAMは発泡スチロールと同等の耐熱性・耐水性があります。それでいながら使用後は生分解する。これなら廃棄食材の活用と発泡スチロールごみの削減が図れます。さらにこれまで廃棄処理に費やしていたコストも不要になる。一石三鳥の商品と自負しており、2022年4月から本格的に製造を開始する予定です」。ちなみにVAMは生分解するだけでなく、100%食品由来の原料で構成されているため、食べることもできるという。
 これにとどまらず、野菜類のさらなる有効利用についても研究を進める。その一環で植物が紫外線や昆虫などから身を守る際に生まれる粘質物や辛味などの成分「ファイトケミカル」に注目。それを抽出し、機能性食品として提供する「ベジ・バー」の商品化に取り組んでいる。

VAMを手にする王さん。

 王さんは「自分たちのできる範囲でSDGsを実現したい」という思いで、さまざまな新規事業を進めている。なおVAMの製造ラインは、いち早い普及拡大を目指し、製造フランチャイズ展開も考えている。

VAMの容器。左の黄色いカップはトウモロコシ由来の原料でつくられている。

SDGs 豆知識 ⑥

 食品業界におけるSDGsの取り組みは農林水産省のホームページ「SDGs×食品産業」が詳しい。内容は大手企業が中心ではあるものの、中小企業の事例も多く掲載されている。また、SDGsに関連して食品産業の働き方改革や食の安全・安心、食品リサイクル・食品ロスなどの情報が入手できるサイトへのリンク集もある。

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