• 中小企業のSDGs
  • 企業の事業内容に沿って、どのようなSDGsの目標達成が図れるのかを解説していく

【レポート】2024サステナビリティトレンド スコープ管理・SBT認定

 上場企業などに提出が義務づけられている有価証券報告書に、環境分野に関連する新たな記載項目が追加された。中小企業にも影響が及ぶと考えられる制度改正への対応を背景に、脱炭素の取り組みを客観的に判断できる「スコープ管理」と「SBT認定」が注目されている。

 

中小企業もGHG排出量の把握が必要になりつつある 

 2023年3月期より有価証券報告書の提出会社はサステナビリティ関連情報の開示が義務化された。「ガバナンス」「リスク管理」は必須の記載事項で、「戦略」「指標及び目標」はその重要性に応じて記載することになった。そのため、上場企業がサプライチェーン全体の取り組み内容を管理するために取引先の中小企業にも脱炭素の取り組みについてヒアリングを行うケースが増えている。

 サプライチェーン全体の脱炭素経営を進める上で、温室効果ガス(GHG=Greenhouse Gas)排出量を測定する範囲を示す「スコープ」という単位がある。スコープ1は製造過程などで企業が直接排出するGHG、スコープ2は他社から供給された電気・熱・蒸気を使うことで、間接的に排出されるGHG、スコープ3はサプライチェーン全体で原料調達や物流・販売などで排出されるGHGのそれぞれの量を指す。

 上場企業のサプライチェーンの構成要素であれば中小企業もスコープ3に組み込まれるため、脱炭素に向けた取り組み状況の開示が必要になる。なお、上場企業でも脱炭素事業の目的をどこに置くかによって算定精度や範囲は異なるため、求められる情報も千差万別だ。

 そして昨今は金融機関もESG投資を視野に入れ、気候変動対策に積極的に取り組む企業への融資を増やしつつある。今後融資を受ける際は、中小企業であっても脱炭素の取り組み状況について聞かれるケースが増えるだろう。

 

中小企業版SBTに注目が集まる

 企業が脱炭素に取り組む際の削減目標がSBT(Science Based Targets)だ。パリ協定で合意された目標である産業革命以降の気温上昇を1.5℃に抑えるためには、二酸化炭素(CO2)換算で毎年4.2%のGHG削減が必要となる。これを実現するための目標がSBTである。国連グローバルコンパクトなど国際機関4団体が運営を担うSBTイニシアチブに対し、企業は年4.2%削減のためにスコープ1~3でどんなことに取り組むかを宣言することでSBT認定を取得できる。認定は通常版と従業員数250人未満かつ非子会社・独立系企業を対象とした中小企業版があり、中小企業版は対象がスコープ1、2に限定され認定費用が安価など、通常版に比べ取り組みやすい。

 自発的に取り組む企業はもちろん、取引先企業からGHG削減について取り組み状況を聞かれる企業であればなおのこと、中小企業版SBTで取り組み状況を客観的に把握できるようにしておくことは有用だ。まずは目の届く範囲としてスコープ1・2のGHG排出量管理に取り組むことで認知度や競争力の向上が図れる。日本の中小企業約350万社のうち2023年9月時点で中小企業版SBTに取り組む企業数は430社ほど。上場企業の情報開示義務改正を好機と捉え認定取得を検討する中小企業の増加が見込まれる。

 

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