• 中小企業のSDGs
  • 企業の事業内容に沿って、どのようなSDGsの目標達成が図れるのかを解説していく

【第2回】製造業 持続可能な未来は事業の延長線上に

本コーナーでは企業の事業内容に沿って、どのようなSDGsの目標達成が図れるかを解説していく。今回は17ある目標(ゴール)のうち「製造業」と親和性の高いものを紹介する。

 2020年版「ものづくり白書」では日本の製造業は国内総生産(GDP)の約2割を占める中心的産業であるものの、取り巻く環境は新型コロナウイルスの影響などからかつてない規模と速度で急変し、不確実性が高まっていると指摘する。
そうした中で、改めて個々の企業の存続条件として、競争力の強化、優秀な人材の確保、CSRといった要素に注目すると、製造業の生き残り戦略とSDGsの間に相関関係が見えてくる。
競争力強化として生産性の向上を考えた場合、「時間当たりの生産数を増やす」「工程を改良し製品の歩留まりや完成度を高める」「原材料の見直しなどで原価の低減を図る」といった工夫・改善が挙げられる。企業によってはIoT、AIなどを活用するケースもあるだろう。このような競争力強化の試みはSDGsの17の目標のうち、ゴール9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の実現を意味する。
今後は少子高齢化が進むため、製造業では技術の伝承が重要なファクターとなる。その流れに対応するため、性別に関係なく「住宅手当・寮制度」「在宅勤務制度」「育児休暇・介護休暇制度」といった福利厚生をより充実させ、多様な人材の定着化・戦力化を図る企業もあるだろう。この取り組みは、ゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」やゴール8「働きがいも経済成長も」の実現になる。
CSRについての配慮も重要だ。製造業では廃棄物が発生した際に、廃棄物処理法をはじめ、リサイクルガイドラインに沿った行動や、マニフェストなどによる適切な管理が求められる。こうした社会的要請に従い、関連法規を順守して企業活動を行うことはゴール12「つくる責任つかう責任」につながる。


また、製造品目によっては実現できるゴールに広がりができる。例えば食品製造業は、食材輸入時にフェアトレードを実践することで、ゴール1「貧困をなくそう」とゴール2「飢餓をゼロに」を実現することになる。
持続可能性に配慮しながらものづくりの基盤強化を図り、成長を志すことはSDGsの実現との親和性が高い。事業活動の目的とその対策、SDGsの結びつきが新たな成長へとつながる。

SDGs 豆知識 ②

SDGsが掲げる環境問題や社会問題を経営課題に組み込み事業を運営することは、企業イメージの向上、将来的な経営リスクの低減、新たなパートナーとの事業機会の創出といったメリットが見込める。国連は、SDGsが達成されれば、2030年までに年間12兆ドル(約1245兆円)の新たな市場機会が生まれると試算している(労働生産性の向上や環境負荷低減などを通じた外部経済効果も考慮)。SDGsの達成は経済的成長を妨げるものではなく、むしろ推進するものだといえる。

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