• 中小企業のSDGs
  • 企業の事業内容に沿って、どのようなSDGsの目標達成が図れるのかを解説していく

【第5回】医療・福祉業 ゴール3(すべての人に健康と福祉を)が内包された業種

企業の事業内容に沿ってSDGsの目標達成を考える本コーナー。今回は医療・福祉業のSDGsについて考える。

 SDGsのゴール3は「すべての人に健康と福祉を」である。医療・福祉業は既にSDGsのゴールを内包した業種だといえる。ただ、医療・福祉業でも取り組み内容によって貢献する分野が多少異なる。例えば困っている人を助ける社会福祉事務所などであればゴール1「貧困をなくそう」やゴール16「平和と公正をすべての人に」などが関わってくるだろう。また、未就学児童の保育業であれば働く親を支えることがゴール8「働きがいも、経済成長も」の実現にもつながる。最近はそれら自事業の取り組みがSDGsのどの目標に関わるかをホームページやパンフレットなどに記載し、社会への貢献度をアピールする社会福祉法人も増えている。全体として見ても17あるSDGsの目標とそれぞれ深く関わる事業が多いのが医療・福祉業の特徴だろう。


医療機関や介護施設は、目の前の困っている人を助けるサービス業であり、その質が向上することはその地域の人にとって広義のQOL(クオリティオブライフ=生活の質)が上がることを意味する。近年、医療・福祉業で重要視されているのが地域連携だ。住民が住み慣れた地域で自分らしく生活できるような「地域包括ケア」を実現するため行政が主導して「保健・医療・福祉連携」の取り組みを行っている。これは保健所が中核となり、地域の保健衛生サービスについて専門的な立場から連携および調整を行う仕組みで、現在、制度化に向けた動きが進んでいる。
また、保育所・保育園の地域交流や連携なども活発になってきている。地域住民や高齢者あるいは小中学生との触れ合いを通じて、地域全体で子どもを育て、見守ろうという活動である。このように医療・福祉業で今後のキーワードになるのが地域との連携といえそうだ。
SDGsはそもそも持続可能な成長を実現するための目標であり、医療・福祉の充実はそのまま社会での生きやすさに直結する。今後、少子高齢化が進む日本社会で医療・福祉業は持続可能な成長を伴いながら、より一層発展していく事業と考えられる。

SDGs 豆知識 ⑤

ゴール3「すべての人に健康と福祉を」については、日本と開発途上国では状況が大きく異なる。例えば、具体的な指標の1つに「2030年までに、新生児及び5歳未満児の予防可能な死亡を根絶する」がある。日本の5歳未満児の死亡率は1%未満だが、10%を超える途上国もある。もっとも5歳未満児の死亡数は、1990年には世界で1250万人いたが、2019年には520万人にまで減っており、確実によい方向に進んでいるのは間違いない。
2017年の世界保健機関(WHO)などの報告によれば、世界ではまだ人口の半分(35億人)が基本的な医療サービスを受けられていないという。国内の問題解決も重要だが、そうした海外の現状にも目を配っておきたい。

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