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  • 企業活性化教育研究所の長尾光雄所長が、企業研修時に経験した「自利利他」にまつわるエピソードを紹介。環境市場新聞創刊時から連載する人気コラム

強い集団をつくるときは 社員の心に火をつけることから

芝蘭之化(しらんのか)-3-

 企業という集団の中で人は育つ。芝蘭之化だ。強い集団をつくるときは社員の心に火をつけることから始めることだ。
 例えば経営破綻し、全社的な意識改革研修を実施したJAL。研修の前と後では大きな意識の違いが現場に現れている。
 エアラインの仕事は多様な仕事の積み重ねがあってはじめて一つのフライトに結びつく。だが経営破綻前は各部署が縦割りで結束が弱かったようだ。自分の職域はしっかり守るが、その後は次の工程の人がやってくれと。それだとサービスは線にならず点になってしまう。最高のサービスは実現しない。
 それぞれの持ち場で自分の責任を果たすのはもちろん、自分の仕事を引き継ぐ相手を思いやり、次工程の作業がしやすいよう配慮する。それが線のサービスをつくる。
 経営破綻する前は、「自分たちはJALの一員」という意識が足りなかった。破綻後は、意識改革研修により、「1機が飛ぶのは自分たちの力だけではなく、多数の部署や他のグループ会社の人との協力の賜物だ」という意識が強くなった。利用客が帰るまで全員でサービスをつくり上げ提供したいという気持ちに変わったという。
 こんなエピソードがある。ある客室乗務員が年配の男性利用客とのちょっとした会話の中で、その日に泊まるホテルの話を聞いた。男性はホテルのスタッフの気遣いをとても褒めていた。飛行機到着後、その客室乗務員はホテルに電話した。男性客がホテルのスタッフの気遣いに大変感謝していたとの情報を伝えた。これで男性客はホテル到着時に満面の笑顔で迎えられ、うれしいサプライズに遭遇するだろう。今のJALでは、こうした「その場での見返りを求めないサービス」も自発的に行っているそうだ。
 京大の日高敏隆教授は「人間という動物の特徴は、集団で生き、集団で育つところにある」と言っている。集団で育った人は今度は集団を強く豊かにする。芝蘭之化だ。

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