• 中小企業のSDGs
  • 企業の事業内容に沿って、どのようなSDGsの目標達成が図れるのかを解説していく

【第10回】教育・学習支援業 主体的な学びを通じ、よりよい未来を実現したい

企業の事業内容に沿ってSDGsの目標達成を考える本コーナー。教育・学習支援業から私立幼稚園の取り組みについて紹介する。

 

 1967年創立のひまわり幼稚園(大阪府大阪市)では、創立以来一貫して子どもたちの意欲を高め能力を発揮できる幼児教育に取り組んできた。

園長の西村尚子さんは「コロナ禍では園児に不自由な思いをさせてしまいました。その一方、幼稚園は緊急事態宣言下でも園児の受け入れを続け、私たちは社会を支えるソーシャルワーカーであることもあらためて意識しました。感染症が流行しても、園児はもちろん、私たち自身も学びを止めてはなりません。昨今は自主的・主体的な学びがより重要になってきていると感じています。そこでまずは私たちの取り組みをSDGsの目標と関連づけて捉え直し、理解を深めることで、子どもたちに引き継ぐ未来をよりよいものにしたいと考えました」と話す。

 

園長の西村尚子さんと園児たち(自分たちがつくったこいのぼりとともに)

 

 これまでも併設した農園で園児が収穫した作物を食育に使用してきた。普段は苦手な食べ物でも、自分で収穫したものなら大丈夫という子は多い。フードロスの削減や食育にもつながる取り組みであり、ゴール3「すべての人に健康と福祉を」ゴール11「住み続けられるまちづくりを」にもつながっている。また、勤続年数の長い職員が多く、自分の子どもを園に入れ、成長を見守る例も多数ある。これはゴール8「働きがいも経済成長も」の実践例といえそうだ。

 

農園は季節ごとに収穫が楽しめるよう、多様な作物を育てている

 

 園の内外で意識して取り組める「環境によいこと」についても話し合った。「消費期限の近くなった食材は冷凍して無駄なく使い切る」「職場でマイ箸を使用する」など職員自身も持続可能な社会の実現に向けできることを徐々に考えるようになった。

「ただ、いろいろな現実に直面し、考えさせられることも多いです。たとえば当園ではゴール5“ジェンダー平等を実現しよう”達成のため、男女別の並びをやめ、五十音順に変更しました。しかし、“小さな子はそもそも自分が男か女かを厳密に理解してはいない。性別があることを理解してもらうためにはあえて男女の区別をしたほうがよい”といった意見が出ました。その考えもよくわかったので、話し合いの結果、場面に応じて対応していこうと決めました。少しでも違和があれば立ち止まり、皆で相談しながら1つずつ問題を解決しています」

 よかれと思って押しつけるのでなく、主体的に考え、行動し、周囲に変化を促す。そうした姿勢が園児に伝わることで、園児たちの日常も変化する。ひまわり幼稚園では現在、職員が一丸となってSDGsを「自分ごと」にすべく、さまざまな局面で奮闘している。

 

 

こぼれ話

日当たりよく広い園庭に、道路を挟んで20種類以上の作物を育てる農園。ひまわり幼稚園は子供たちの学ぶ意欲を高め、能力を発揮できるよう環境整備に力を入れてきました。園長の西村尚子さんは「私たちのSDGsの取り組みは始まったばかりですよ」と話されていましたが、元々あるべき幼児教育の姿を模索するなかで、ゴミや食べ残しなどに関して環境保護の観点からなるべくロスを減らしたいと考えていた同園にとっては、SDGsを園の業務に組み込むことは必然だったのかもしれません。 それにしても広い農園には驚きました。聞けば近隣の方がボランティアで手入れをされているとのこと。地域の家庭と密接かつ良好な関係ができていることの証しだと思いました。ちなみにSMART CLOCKは皆が目にする廊下に設置され、同園の省エネ活動に一役買っています。

広い園庭は遊具もあります
ビニールハウスではイチゴを栽培していました
廊下に設置されたSMART CLOCK

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