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  • 東日本大震災から復興への歩みをみせる被災地の企業や日本テクノの取り組み

流された思い出のためにも今の一瞬一瞬をScene 34

 岩手県盛岡市にある株式会社 ヒヤマフォトスタヂオは、まもなく創業50年を迎える写真館だ。「記念写真」より「おもいで写真」。自らを「シアワセピクチャー制作スタジオ」と称し、写真・映像を通じて顧客に喜ばれる商品とサービスを提供している。

省エネで電力不足解消の一助に

株式会社 ヒヤマフォトスタヂオ。向かいには岩手大学がある。


 東日本大震災では市内で震度5強を観測。屋上にあるキュービクルは土台が崩れ、道路に落下しそうなほど傾いた。壁面にもひびが入り雨漏りの原因となった。代表取締役の樋山桂さんは「当日は停電で地震や津波の情報が入らず不安な思いをしましたが、この周辺は幸いにも翌日から電気が復旧しました。それまで皆さんが自主的に交通整備する姿などを見て、岩手県民の助け合い精神の強さを実感しました」と振り返る。
 向かいには岩手大学があり、当時は卒業シーズンの最中。例年通り卒業生たちの袴姿の写真撮影が入っていたが、震災の翌々週に控えた卒業式は中止になった。さらに翌月の入学式、夏前までピークが続く結婚式なども自粛ムードが広がり、撮影の依頼が大幅に減少した。
 「卒業・入学式の際の売上は年間の2割弱に当たります。これからどうなるのか、先がみえない状況でした。地域的には震災による直接被害は比較的少なかったのですが、こうした二次被害は多くの企業が経験していると思います」。売上が上がらなければ支出を減らすしかないと考えた樋山さんは、震災後に日本テクノのサービスを導入し、省エネ活動に取り組んだ。「さらに日本全体で電気の使い方が見直されていた時期でしたから、皆でピークを抑制すれば、電力不足を解消できると思ったのです」。

代表取締役の樋山桂さん

 樋山さんは震災後、利用客の写真に対する思いに変化を感じたと話す。「津波によって多くの思い出が流されました。だからお客様も思い出を残したいという気持ちが強くなったように感じます。私たちは、一瞬一瞬を記録するという写真館としての使命があります。その責任を果たしていきたいと改めて心に刻みました」。そうした思いが通じ、約1年後には、震災前と同等かそれ以上の「おもいで写真」が、このスタジオから送り出されるようになっている。
こぼれ話

ヒヤマフォトスタジオは、2012年の盛岡営業所開設後、同エリアで初めてご契約いただいたお客さまです。東日本大震災の影響による電力不足解消や、通常営業がままならないなかで写真館を運営していくため、率先して省エネに取り組みました。しかし、本業へのこだわりは持ったままだったといいます。当初LED照明の導入も考えましたが、色は重要な要素になるため、色評価蛍光灯を使用し続け不要な場所は間引きしました。省エネばかりに重きを置くのではなく、その状況や仕組みに応じて必要なものを精査することで、以前と変わらぬサービスを提供でき、お客さまが絶えないのだと思いました。

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