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水に次いで消費される天然資源「砂」がピンチ!

本コラムは当社提供番組『省エネの達人「企業編」』内の省エネコラムと、当社導入事例サイト内で展開していた『環境コラム』を合わせて新たにリニューアルしたものです。

主に建築資材として一般的なコンクリートや、窓などのガラス製品。身近に溢れているこれらの原材料が「砂」であることはご存じでしょうか。実は近年の世界的な建設ラッシュなど開発の加速により、天然資源である砂が枯渇の危機に瀕しています。さかんに報道されているわけではないのでなかなか想像がつきにくいかもしれないこの問題、その原因と影響についてご紹介します。

「砂不足」の仕組み

砂が大量に消費される最たる例が「建設」です。ビルやマンションのほか、トンネルなど、コンクリートを使用する建造物の工事が世界中で次々に進められています。特に発展途上国など都市化が進む地域で需要が拡大しています。
コンクリートはセメントに水や砂、砂利を混ぜ合わせてつくられますが、粒の大きさが小さかったり硬度の低い成分の粒が多く含まれたりしていると出来上がったものが脆くなってしまうため、どこの砂でもよいということではありません。
コンクリートに最も適しているのは「川の砂」。角が丸みを帯びており、サイズに統一感があるのが特徴で、柔らかい鉱物が混ざりにくいため、強度も強いという特長があります。(ちなみに、川の砂はいずれ海に運ばれますが、海岸の砂には海水(塩)が付着するため、化学反応が起こってしまいコンクリートには不向きです。貝殻や海洋生物の混入もデメリットです。また、砂漠の砂では粒が小さすぎて、強度に問題が生じます。)
コンクリートに使用するために採取される砂の量は、この20年で3倍に増え、年間500億トンに達していますが、これは自然界の仕組みの中で砂が生成される量をはるかに超えています。今や「砂は金よりも貴重だ」と唱える人々もいるほどです。

砂がなくなるとどうなるの?

川で砂が採取されると、その分海へも砂が運ばれなくなります。川や海から砂が消えることで、環境に対して数々の影響が及びます。

●川の砂不足で発生する問題: 河口で海水が逆流し塩害が発生する。生態系が崩れて魚が住めなくなる。
●海の砂不足で発生する問題: 砂浜が消失し、津波の被害が拡大する。海岸線が削られて国土が縮小する。島が沈む。

こうした環境への影響のほか、需要拡大を背景とした砂の争奪戦によって、違法な採掘業者が出現するなど犯罪行為も横行し、治安への影響も懸念されます。
日本はこの問題と無縁と思いがちですが、日本では1970年代までによい砂は取りつくしてしまって、すでに砂の採取ができない状況であるといっても過言ではありません。新しく必要となる砂は、主にオーストラリアなどから輸入しています。高度経済成長期ほどの需要はなくなり、国内の供給は足りているようにも思われますが、これまでに述べた世界的な事情を鑑みると楽観視はできません。

進む再利用

実はコンクリートは再利用が可能。取り壊した古いビルから出るコンクリートをすり潰し、砂に戻すことができるのです。日本ではこの再利用が世界と比較しても進んでおり、2000年に建設リサイクル法が施行され研究開発が進んだ結果、今では再利用率99%を誇っています。
もうひとつの代表的な砂を使った製品であるガラスも、もちろんリサイクル可能。家庭でも分別収集してリサイクルに協力することで、砂の消費を抑えることができます。

普段の生活の中で何気なく目にしているコンクリートやガラス、そしてその原料である砂がこれほど重要な資源だとは、なかなか考えがおよびにくい部分です。今回ご紹介した「砂」と同じように、世の中にあるものはすべて貴重な資源であり、有限であるということを意識して暮らしていきたいですね。

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建材製造現場での省エネ事例はコチラ「省エネの達人『企業編』」第326回 株式会社佐藤製材所

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