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COP27が開催中!気候変動に対する最新の議論に注目


11月6日(日)から11月18日(金)にかけて、13日間の日程でCOP27(国連気候変動枠組条約第27回締約国会議)が開催されています。条約採択から30周年を記念する今年の議長国はエジプト。これまでにアフリカ大陸では3度開催されていますが、エジプトでは初めての開催となります。
今回のCOPでは、前回のグラスゴー気候合意を受けて、世界の国々に対してさらなる具体的な行動や目標達成へのプロセスの明示が求められます。ただ、方向性や資金面における先進国・途上国間の軋轢、2022年に入ってからの国際情勢などの影響により、世界が足並みをそろえられるかどうかに注目が集まっています。地球温暖化の防止やカーボンニュートラルに向けて、どのような議論が交わされるのでしょうか。
今回はCOPについての基本的なおさらいと、COP27の論点について解説します。


COPとは何か?

COPとは「Conference of the Parties」の略です。直訳すると「締約国会議」となりますが、報道などでCOPという表記を目にした場合、「国連気候変動枠組条約締約国会議」を指すことが多いです。後ろに続く数字は開催回数を表します。COP27は「27回目の国連気候変動枠組条約締約国会議」という意味です。
気候変動枠組条約は「大気中の温室効果ガス(CO2、メタンなど)の濃度を安定化させること」を究極の目標とし1992年に採択され、1995年に発効されました。以来、毎年開催されています(2020年は新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により中止・延期)。締約・参加するのは197の国と地域。まさに地球規模の会議であるといえます。ここで議論され決定したことは、国際的な取り決めとして大きな影響力をもち、各国の政策や方針に転換・変更を促す場合もあります。

これまでのCOPで、特に大きな決定が行われたのは、以下の2つです。

①京都議定書(COP3、1997年)
・2020年までの温室効果ガスの削減目標を定めた
・削減目標の対象国は先進国のみ
②パリ協定(COP21、2015年)
・2020年以降の温暖化対策(削減目標の策定義務など)を定めた
・発展途上国にも排出削減を求めた


会議では開催時点の各種データや最新の研究にもとづき、各国の温室効果ガスの排出削減について数値目標を設定したり、目標達成のための国際的な仕組みを構築したりと、地球規模で足並みをそろえて問題に立ち向かおうとする姿勢が見られます。経済発展とのバランスや参加国それぞれのエネルギー事情といった課題はありますが、人類共通の課題として協力した取り組みが進んでいます。


COP26から今日までの日本の動き

COP26(2021年)の決定は「グラスゴー気候合意」と呼ばれます。パリ協定で定められた「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」から、さらに踏み込んで、「2100年の世界平均気温の上昇を産業革命以前の1.5℃以内に抑える」という高い目標に変更されました。また、石炭火力発電は段階的削減をめざすとしています。この点については、「段階的廃止」としていた文案に対しインドなどが反対し、「段階的削減」に改められました。
日本は2020年10月に、2050年カーボンニュートラルを宣言し、COP26の直前に「2030年までに2013年比温室効果ガス46~50%削減」という野心的な目標を国連に提出しました。しかし、各企業が公表する2030年までの削減計画を総合してもこの目標に届かない、という調査結果もあります。2022年2月以降の国際的なエネルギー危機をきっかけのひとつとして次世代炉や地熱・風力発電といった脱炭素電源開発への注力が加速しつつありますが、国としての目標達成には官民一体となった一層の努力が求められます。


COP27で話し合われる内容

さて、今回のCOPではどんなことが議題に上がるのでしょうか。COP27公式HPでは、「緩和」、「適応」、「資金」、そして「協調」というキーワードが上げられています。
このため今回のCOPでは、発展途上国の立場や懸念を反映するとともに、新型コロナウイルス感染症の流行やウクライナ侵攻に端を発するエネルギー危機を乗り越えて歩みを進めることが予想されます。特にエネルギー問題については、LNG価格の高騰への短期的な対策として石炭火力発電へ回帰の動きが見られており、IEA(国際エネルギー機関)によると2022年のCO2排出量は前年比1%弱増加する見込みとのこと。再生可能エネルギーの普及を差し引いても排出が増加する結果となりそうです。


また、すでに気候変動により起きている熱波、干ばつ、洪水といった災害は規模が甚大になっています。2022年だけでも、6月にパキスタンで洪水が発生し国土の3分の1が水没、3300万人が被災したほか、8月には韓国でも記録的な豪雨があり、多数の死者が出ました。アメリカ大陸、欧州、オーストラリアでは熱波による山火事が発生。干ばつにいたっては北半球を中心に世界同時多発的に起こっており、農業や畜産の生産量が減少している地域が数多く見受けられます。
温室効果ガスの排出削減だけでなく、排出されたガスにより引き起こされたと考えられる気候変動対策(適応策)もCOPでは重要な議題です。待ったなしの現状に対し、対策や支援、援助の枠組みについて話し合われることが期待されます。


地球ではたくさんの人々がそれぞれの事情を抱えて暮らしている以上、まったく同じ条件で「環境保護」という1点を追い求めることはできません。これから経済発展を遂げようとする発展途上国にとっては、経済活動と排出量削減を同時に行わなければならず、先進国に比べて不公平だという声があがります。一方、発展途上国の排出削減に対して資金提供を求められる先進国においても、自国の対策のほかに財源を確保しなければならず、悩ましい問題かもしれません。国際情勢の影響を受けて、各国の温度感に差が出ることもあります。課題は常について回ります。


しかし、これらの会議での合意内容を受けて、新技術の開発が進む、排出量取引といった新たな枠組みができる、各国が政策方針として2050年までのカーボンニュートラルを宣言するなど、持続可能な発展に向けてCOPが大きな流れをつくっていることは疑いようがありません。その流れを受けて、自治体や企業、ひいては各個人にも、意識や行動の変容が求められるでしょう。


気候変動は人類共通の課題です。極端な例ですが、「気候変動がもたらした結果が、電気代、ガス代、食費の値上がり」であると考えると、ぐっと身近に感じられるのではないでしょうか。省エネやゴミの分別など、わたしたちの地道な活動が環境保全につながります。COP開催時期の今、気候変動について、いつもより興味をもってニュースに耳を傾けてみませんか?

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