• 知っておきたい再エネ
  • 2050年カーボンニュートラルの実現に向け、再生可能エネルギーのさらなる普及と、安全・安心なエネルギーの供給体制構築のために重要なことは何か。現状から読み解きます

【第4回】世界第3位の資源量 日本の地熱発電

 今回は再生可能エネルギー(再エネ)の中でも自然条件に左右されにくく安定的出力源になる地熱発電の現状と課題および展望を紹介する。

発電量は国内需要の0.3%

 地熱発電は地球内部にあるマグマなどの熱を利用する発電方法。通常マグマは地下深部にあるが、より浅い地下1.5〜3km付近の地熱貯留層(マグマが温めた高温高圧の蒸気・熱水の層)の熱によりタービンを回し発電する。季節や天候に影響される太陽光や風力などの再エネに比べ安定したエネルギーが得られる。環太平洋火山帯にある日本の地熱資源量は世界第3位の約2300万kW。ただ利用はごく一部で国内に20以上の地熱発電所が点在するが発電設備容量は約61万kW。2016年度時点で国内電力需要の約0.3%だった。
 地熱発電は開発に時間とコストがかかる。初期調査から発電開始までおよそ10年といわれ実際に掘削調査をしても発電条件に満たない場合もある。また地熱資源のある場所は多くが国立・国定公園や温泉地で、利用規制や景観保護の観点から開発が制限されてきた。

地域との共生が必須

 国を挙げた再エネの主力電源化が加速する中、経済産業省は2030年度までに地熱発電も設備容量を現在の2倍以上の148万kWという目標を掲げ、開発の支援を始めた。先導調査は独立行政法人が行い、そのデータを事業者に提供する方法だ。支援事業は全国30地点以上で進められ、すでに3カ所で発電所の運転が開始されている。
 地熱発電所の運用には周辺地域との共生も不可欠だ。環境保全に十分配慮し、温泉資源保護との両立も考える必要がある。温泉に対する地熱発電の影響の有無を科学的に明らかにし、その情報を公にすることが、温泉事業者など関係者の不安を解消し、共生へ向けての良好な協力体制を築いていく。
 革新的な技術開発も進んでいる。「超臨界地熱発電」は従来よりさらに地下深くマグマに近い部分の熱水資源(高温・高圧力により液体と気体の区別がつかない水)を活用する仕組み。2050年をめどに実用化が検討されており、これによって現状より大規模な発電が可能になり、発電コストの低減も見込める。
 火山大国・日本が持つ豊富な地熱資源。長期的に安定したエネルギー源への期待は大きい。

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