• 知っておきたい再エネ
  • 2050年カーボンニュートラルの実現に向け、再生可能エネルギーのさらなる普及と、安全・安心なエネルギーの供給体制構築のために重要なことは何か。現状から読み解きます

【第1回】再生可能エネルギーを取り巻く日本の現状

 2050年カーボンニュートラルの実現に向け日本のエネルギー政策は大きな転換点を迎え、さらなる活用が期待される再生可能エネルギー(再エネ)。日本における再エネの現状や課題をシリーズで紹介する。

温暖化対策と海外依存脱却

 2021年7月に公表されたエネルギー基本計画の素案では2030年度に目指す再エネ発電の比率を36〜38%にしている。2019年度の実績は18%。倍増を狙う野心的な目標である。
 なぜそこまで増やそうとするのか。周知の通り背景には地球温暖化の問題がある。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第1作業部会が2021年8月に発表した第6次評価報告書では、温暖化対策を施さなかった場合、今世紀末には世界の平均気温が3.3〜5.7℃上昇すると予測した。そのとき世界の年平均降水量は最大13%増加し、平均海面水位も最大約1m上昇する。
 日本の温室効果ガスの排出量は2019年度実績で12億1200万トン。うち約8割がエネルギー起源の排出量だ。つまりエネルギー政策の見直しが地球温暖化対策に大きく貢献する。また、化石燃料に頼る発電は現状7割以上を占めるが、燃料のほとんどは海外からの輸入だ。エネルギー安定供給の観点からも再エネを含めた国産燃料の増加が求められている。

日本における再エネ

 石油や石炭などの化石燃料と違い半永久的に利用でき、発電時には温室効果ガスの排出がほぼない再エネ。その種類には水力、太陽光、バイオマス、風力、地熱などがある。2019年の再エネ電源の内訳は、水力7.7%、太陽光6.7%、バイオマス2.5%、風力0.7%、地熱0.3%だった。
 これらの導入量を増やすには、自然環境に左右される発電量の制御、送電網の強化、それに関わるコスト負担などの課題をクリアする必要がある。今年6月に開かれた経済産業省の調査会では、「2050年に電力量の95%を再エネで賄うと、1kW時当たり平均の発電コストが2020年の8.9円から19.2円の2倍超に上昇する」との意見も出た。
 国土が狭く海に囲まれた日本では諸外国と同様の再エネ普及政策はとりにくい。この国でのエネルギー供給体制には何が必要か。再エネの現状から読み解いていく。

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